ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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交錯



 眩い光が降り注いでいる。
 身に纏わりつく冷気と瞼を射す光を感じて、ユージンは目を醒ました。
 意識が覚醒した途端、腹部に鈍い痛みを感じた。
 同時に嫌な現実を思い出す。
「ちくしょう……!」
 ユージンは思い切り眉をひそめた。
 開け放たれた窓の桟に半身を乗り出すようにして、気を失ってしまったらしい。そんな己の情けない姿が、グラディスが出ていったという事実をありありと突きつけてくる。
 不快な目醒めだった。
「ユージン、起きたの?」
 ふと、背後からレイジィの甲高い声が飛んでくる。
 ユージンは痛む腹を片手で押さえ、桟から身を離すと後ろを振り返った。
「先に目を醒ましてたなら、起こせよな」
 ユージンが憮然とぼやくと、レイジィは渋い顔を作った。
「あたしも起きたばかりよ。――ねえ、グラディスは?」
「出ていった。あいつ、独りでキリエのところに乗り込む気だ」
 グラディスを引き止められなかった悔しさが甦ってきて、ユージンは苛々と吐き捨てる。
「やっぱりね……」
 レイジィが重苦しい溜息を落とす。
 彼女は途方に暮れたように室内に視線を彷徨わせてから、再びユージンを見た。
「じゃ、行きましょう」
 それが当然だ、と言わんばかりの明朗な声音でレイジィが促す。
「どこにだよ?」
「決まってるじゃない。当初の予定通り、キリエの別邸を虱潰しに回るのよ。それ以外に、グラディスに追いつく方法もアナンを救出する術もないでしょう。荷物をまとめたら、出発よ」
 有無を問わせぬ口調で宣言し、レイジィは身を転じた。
 彼女の部屋にはクシュカ族の男を捕縛してある。そのためにレイジィの荷物は、昨夜のうちにこちらの部屋へと運び込まれていた。
 ユージンの返事を待たずに、彼女は床の片隅に置いてあった自分の荷物をまとめ始めてしまう。
 その様子を見て、ユージンも自分の荷物をまとめにかかった。
 レイジィの提案に反発する要因は何もない。
 世界はまだ朝を迎えたばかりだ。
 朝陽特有の白っぽい光と、秋の寒気がそれを物語っている。
 グラディスが宿を飛び出したのは、夜が明ける直前。
 それからまだ大して時間は経過していないはずだ。
 必死にグスタクへ向かえば、彼に追いつける可能性は充分あった。
 ――頼むから、馬鹿な真似はしないでくれよ、グラディス。
 胸中で祈りにも似た呟きを発し、ユージンは黙々と荷物の整理を続けた。



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2009.10.02 / Top↑
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