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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Wed
2009.06.03[00:17]
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『園田充』という人物に他者が抱くイメージの大半は、明るい・軽い・脳天気・ハンサム・女好き――という類のものだった。
 それは他者が彼の陰惨な過去を知らないからであり、また充本人がそれを他人に悟られないよう楽天的に振る舞ってきたからである。

 園田充は夢を見ていた。
 それも、ひどく不愉快な夢だ。
 暗闇の中にポツンと存在するベッドの上に、充は座っていた。
 それだけでは別に不愉快にはならない。
 夢に歓迎したくもない闖入者が現れた瞬間、心に暗雲が立ちこめたのだ。
『充……。あたしの充』
 甘ったるい女の声が闇に響く。
 直後、ベッドに女性のシルエットが白く浮かび上がった。
 影は、充がこの世で最も忌み嫌う人間の姿を模していた。
 母――富山悦子の姿を。
 この世に生を受けた時点での充の本名は、『富山充』だった。
 だが、それを知る人間は、今の充の周囲には存在していない。
『愛してるわ、充』
 悦子はなぜか裸体を晒していた。
 白い指が愛しさを込めて充の頬を撫でる。
「触るな」
 充は邪険に悦子の腕を払い除けた。
 夢なのに、悦子の肉体にははっきりとした肌の感触があった。
 それがまた不快感を煽る。
 悦子は、美人とは言えぬ十人並みの容姿の持ち主だ。
 だが、その肢体は豊満な胸と細くくびれたウエストに恵まれ、濃厚な色香を漂わせている。
 美しい裸身は淫靡で、見る者を惹きつける魔力を持っていた。
 その、ある種の才能を活かして悦子は様々な男に寄生し、今日まで生きてきたのだ。
 充には父親がいない。
 正確に言えば、父親が誰であるのか不明だった。
 充は、悦子の私生児としてこの世に生まれ落ちたのである。




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