ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 ルシアの黄金色の双眸が大きく揺らめいた。
 動揺と畏怖に、彼女の顔から血の気が引いてゆく。
「あなたは……星を害するために、ここへ来たのですか?」
 ルシアの唇から震えを帯びた声が洩れる。
 ユージンは逡巡することなく頷いた。
「星なんてものに、本当は何の意味もないんじゃないか? 星の存在意義が俺には解らないし、星が正しい王を選定しているとは思えない。セラはただの気紛れで王を選んでるだけだ」
「何という恐ろしいことを……。国王の星はセラの分身であり、シアの全てとも言える貴き存在なのですよ」
「その考えがおかしいんだよ。この国の人間は昔からそれを当然のように受け止め、セラを信じ切ってるけど、俺にはセラが善意で国王を決めてるとは思えないね」
「セラに対する侮辱ですわ」
 ルシアがますます顔を青ざめさせる。
「あんただって、心の底では星による王位継承はおかしいと思ってるんじゃないのか? ギュネイが、王に相応しい男だったと信じてるわけじゃないだろ。妻と娘を蔑ろにして他の女に執心し――挙げ句、神聖な星守姫を無理矢理我が物にしたような男だ。そんな奴が、この国の王に相応しかったっていうのかよ?」
 ユージンが厳しく言及すると、ルシアは押し黙った。
 やはり彼女も心の片隅では、父親のしでかしたことが王にあるまじき行為だと考えているのだ。
「星神の国シアにとって、セラに選ばれし星守人は貴き存在なんだろ。この国の王こそが誰よりも星守人を重んじなければならないはずだ。なのに、ギュネイは自分の星を守護する星守姫を穢した。あってはならないことが起こったのに、国王の星は輝きを失わなかった。セラは、まだギュネイが王であると認め続けた。自分に遣える星守姫が踏みにじられたのに、だ。おかしいだろ? 俺が生まれた時、ギュネイの星はディータの星刻とともに輝きを失わなければならなかったんだ」
 ユージンは心に溜まっていた言葉を一気に吐き出した。
「セラは王を見極めてるわけじゃない。ギュネイの星が失墜しなかったのが、揺るぎない証拠だ。あんたたちが盲信するセラは、単なる気紛れで王を選んでるだけだ」
「小僧の戯言など気にするな、ファ・.ルシア」
 キリエがルシアをそっと脇に押し退け、前に進み出てくる。
「面白い見解だが――この国ではそれが現実だ。セラに与えられた星が王を決める。そして民は、セラが選んだ王を従順に受け入れる」
「そんな馬鹿げた王位継承制度は、今日で終わりだ」
 ユージンはキリエの冷ややかな眼光をはね除けるように、きつく彼を睨んだ。
 ――この国は狂ってる。
 かつてグラディスが述べたように、皆がセラの狂信者だ。
 それゆえに、星による王位継承制度やそれに伴う星戦、そして星守人の存在に疑問を抱かない。
 遙かな昔から続く歪な因習が、民の心を麻痺させている。
 人々の心の中には、全てセラ任せ――新王の選定も星と星守人に任せておけば大丈夫だ、という安心感が根づいてしまっているのだ。
 セラから賜った星に過ちなどあるはずがない、セラに任せておけば国は安泰だ、と信じ込んでいる。
 シア国民の精神には、神頼みにしておけば楽だ、ということが刷り込まれてしまっているのだ。
 だからこそ、今まで誰も星に猜疑心を抱かなかったのだ。
 ――誰も気づかないなら、気づいた俺がやるしかないだろ。
 星は、確かに星神セラからの贈り物だったのかもしれない。
 だが、その星が民を正しく導く王を見定めているとは最早思えなかった。
 悪行を犯したギュネイが、つい先日まで玉座に就いていたことが何よりの証拠だ。
 しかし、その事実を民が知ることはない。
 星神の威信を落とさないために、神殿が――星守姫ファ・ルシアが事実を隠蔽した。
 真相が表に出ないから、民は今でも星が善き王を選んでいると信じて疑わない。悪循環だ。
 過去にも似たような出来事があった可能性だってある。その度に大神殿はそれをひた隠しにしてきたに違いない。
 そうして少しずつ――だが確実に、シアという国は歪みを生じてきたのだろう。
 歪みは大きくなる前に正すべきだ。その方がシアにとっても被害は少ない。
「あんたに星は触れさせない」
 ユージンはキリエを見据え、剣の柄を握る手に力を込めた。
「レイジィ、星は任せたぞ!」
 鋭く叫び、ユージンは床を蹴った。


     *



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2009.10.10 / Top↑
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