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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Wed
2009.06.03[00:21]
『あたしの可愛い充』
 悦子は懲りもせずに充に絡みつき、耳元で囁く。
 狂信者めいた囁きに、充は思い切り眉をひそめた。
 実際、本物の悦子は狂っている。
 狂気に身を委ねた母親を、充は激しく嫌悪していた。
 だから、もう三年近くも逢っていない。
 意図的に逢うのを避け続けている。
 その彼女が、どういうわけか夢の世界に現れたのだ。
 胸糞の悪いことこの上ない。
『充、あたしよ――お母さんよ』
「うるさい。寄るな。触るな。離れろ」
 充は冷たく言い放った。
 だが、悦子は充にしがみついたまま離れようとはしない。
 父親が類い稀な美男子だったのか、充は母親に似ず、整った容姿を持って生まれてきた。
 中学の頃までは、樹里に劣らぬほどの美貌を誇っていたのだ。
 中性的な美しさを持つ息子を、悦子は溺愛した。
『どうしたの? 照れることないじゃない。昔はよく、あたしと一緒に寝たでしょう』
 媚びるような悦子の声が、充の神経を逆撫でする。
「やめろ。いい加減、離れ――」
『こうしてキスして』
 充の言葉を悦子は口づけで封じ込めた。
 全身に悪寒が走る。
 充は反射的に両手で悦子を突き飛ばしていた。
 嫌な過去が甦る。
 悦子は充を溺愛した。
 愛情はやがて妄執となり、果てには狂気へと変貌を遂げたのだ。
 充を産んだ時、悦子の肉親は既に他界していた。
 孤独な悦子には、腹を痛めて産んだ息子だけが大切な宝物だったのだろう。
 彼女にとって、充は唯一の愛の対象物だった。
 大好きな息子。
 愛する充。
 強烈な想いは飛躍し、盲愛という狂った翼を広げた。
 十二歳の時、充は初めて母親に性的関係を強要された。
 実母に犯されたのだ。
 母親が恐ろしい怪物のように感じられたが、恐怖ばかりが募り、逆らうことなどできなかった。
 それ以降、悦子は頻繁に充を求めるようになり、充は何度も母との行為を強いられてきた。
『大好きよ、充。愛してるわ。だから、充もあたしのことを愛して』
 突き飛ばされても、悦子は怯まなかった。
 充の元へ這うようにしてやってきて、再び身を絡めてくる。
「……やめ……ろ」
 充は青ざめた顔で呻いた。
 抵抗しようとは思うのだが、身体がいうことを利かない。
『愛してるわ。充はあたしだけのモノよ』
 おぞましさに竦んでいる充を、悦子は力任せにベッドに押し倒した。
 そのまま充の腰に乗り上がってくる。
 豊満な胸が、充の目の前で妖しく揺れた。




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