ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 田端樹里は仄暗い闇の中で目を醒ました。
「う……ん……」
 開いた瞳に映るのは、墨汁を噴霧させたような薄闇だけだ。
 意識を覚醒させようと頭を振った途端、後頭部に鈍痛が走った。
 水妖に攻撃され、壁に打ちつけられた時の名残だろう。
 痛みのおかげで、徐々に意識と記憶がクリアになってきた。
「水柯は……どこなんだ?」
 引き離された幼なじみの姿を目が無意識に求める。
 しかし、どこにも貴籐水柯の姿はなかった。
 視界に入ってくるのは闇だけだ。
 何かを背にして凭れていることから、辛うじてここが意識を失ったのと同じ場所――三階の廊下であることは判断がついた。
 しかし、どこか妙だ。
 壁も床も微妙に柔らかく感じる。
 ウォーターベッドに横たわっているような、奇妙な感覚が全身を包んでいた。
 ――旧校舎の廊下じゃないのか?
 胸に芽生えた疑問に顔をしかめた瞬間、闇を裂くようにして白っぽい光が出現した。
 樹里は渋面のまま白い影の方へ目を向けた。
 白煙のようなものは、人の姿を造り上げてゆく。
 輪郭が女性特有の曲線美を描いた。
 豪奢な巻き毛に縁取られた貌ができあがった時、樹里は思わず息を呑んでいた。
 心臓が大きく脈打ち、全身の肌が粟立つ。
 大きく見開いた双眸で、樹里は白い女性を凝視していた。
 自分と同じ色彩を放つ、妖艶な美女が闇の中に佇んでいる。
 眩いプラチナブロンドに翡翠色の瞳。
 紛れもなく母――サラ・エドワーズだった。




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2009.06.03 / Top↑
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