FC2ブログ
管理画面
ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Thu
2009.06.04[00:06]
「――おい」
 重々しい空気を断ち切ったのは、直杉の憮然とした声だった。
 彼女は水妖が落としていった物体を拾い上げて、形の良い眉を僅かにひそめた。
 強い不審の色が秀麗な顔に浮かぶ。
「奴が叩きつけていったのは、生徒手帳だぞ」
 直杉が、制服と同じ渋い緑色をした手帳を水柯と充に突き出してみせる。
「ご丁寧にページが指定されている」
 その一言に、樹里をさらわれて愕然としていた水柯は慌てて我に返った。
 充とともに直杉の傍らへ駆け寄る。
「生徒手帳がどうしたっていうのよ」
 水柯は懐中電灯で手帳を照らしながら、大きく首を捻った。
 水妖の真意が掴めない。
「読め――ってことだろ。ったく、今時、生徒手帳なんか熟読するヤツいないって」
 充が不平を洩らしながら、胡乱げに生徒手帳に視線を落とす。
「何だよ、コレ? 校則特記とか書いてあるな」
「うむ。『旧校舎と新校舎に囲まれた中庭の噴水。毎年九月九日、その日が月のない夜ならば、噴水から水の妖かしが出現する。水妖――呪われた生き物は人の生命を奪う力を備えている』――どうやら水妖伝説について語られているようだぞ」
 綴られた文章を読み上げ、直杉が思案するように双眸を眇める。
『校則特記』とやらは、水妖伝説について語り、その危険性を指摘し、そしてそれらに関わることを強く禁止している文章だった。



← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト



 
テーマ * 学園小説 ジャンル * 小説・文学
編集[管理者用] このページのトップへ

 

 
Copyright © 2020 言葉のさざなみ, all rights reserved.