ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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《WALTZ》に駆け込んだその時から、あたしは好奇と嫉妬と羨望と驚愕の相俟った視線を浴び続けることになった。

 そ、そりゃあ、そうよね……。
 楽しいイベントを一瞬とはいえブチ壊した挙げ句、六楼さんが真摯な表情であたしの元へ駆けつけ、そのあたしはといえば――トップアイドル山梨和久と同伴で堂々の入店となったんだもの……。
 反省どころか、穴があったら入りたい最悪の気分だ。
 あたしの背後に山梨くんとビッショウ様と南海の姿を発見した六楼さんは、ひどく驚いた様子でコンマ数秒ほど凝固していたと思う。
 誰よりも早く事態を把握した店長がカウンターから颯爽と出てきて、六楼さんの肩に手を触れなければ、まだしばらく彼は絶句状態のままだったかもしれない……。
 店長に触れられた瞬間、呪いから解き放たれたかのように六楼さんの顔に生気が戻り、眼鏡の奥の双眸にはいつもの怜悧な輝きが灯った。
「「いらっしゃいませ。《WALTZ》へようこそ――」」
 店長と六楼さんが息もピッタリに爽やかな笑みを浮かべ、優雅に一礼する。
 頭を上げた店長の片手が流れるような動作で店の奥を示し、六楼さんがさり気なくあたしの腕を引いてくれる。
 立ち尽くすあたしの背中を山梨くんがそっと押し出してくれなければ、あたしは極度の緊張と羞恥のあまりに気絶していたかもしれない。
 自業自得だけれど、そんな無惨なスタートであたしは《WALTZ》のクリスマスイベントに加わることになった。


 店長と六楼さんに案内され、あたしたちは一階奥のテーブルに案内された。
 案内された――というより、明らかに隔離されたんだけど……。
 客席の合間を縫って奥へ進む間、
『ちょっ……ナマ山梨なんだけどっ……!?』
『嘘ッ……!? どうして、ナッシーがM市なんかにいるのよっ!』
『ホンモノかよ、アレ? 意外と身長あるんだな』
『え、山梨くんが来たってコトは――今夜、ルイさんが復活するって噂、真実なのっ!?』
『何だよ、アイツ……! 《WALTZ》にまで来んなよ!』
『スッゴーイ! リアル魔王だわッッッ!!』
『信じられねェ! オレたちのルイとマジでつき合ってんのかよっ!?』
『うわぁ……ヤマナシ激カッコイイんだけど!』
『ルイッ……あんな顔だけヤローの何処がイイんだよ……』
『ラッキー! あたし、ナマ山梨二回目! 前に《蝦夷舞鮨》でも遭遇したもん』
『へえ、テレビで観るより男前だな、山梨』
『まっ、魔王様がついに《WALTZ》に降臨されたわっ!』
『うおっ、男なのに何かスゲーイイ匂いすんだけど』
 誰よりも不躾な視線とヒソヒソ声の集中砲火を喰らっていたのは、言うまでもなく山梨くんだった。
 女性はもちろん男性客まで滅多に逢えないアイドルを間近に目撃して、些か興奮しているのかもしれない。
 他人から注目を浴びることに慣れている山梨くんは、方々から飛んでくる様々な感想にも呼び捨てに対してもあからさまな非難や悪口にも全く動じずに、時折「すみません」と軽く頭を下げながらあたしの隣を歩いていた。
 お客さんたちの反応や山梨くんの身のこなし方を目の当たりにすると、あたしと肩を並べているイケメンが、スーパーアイドルだという現実を改めて思い知らされる。
 ルイさんファンと思しき男たちから悪意のある罵声が飛んできても、山梨くんは眉一つ動かさずに受け流していた。
 十代の頃の山梨くんなら中指を立てながら罵り返していてもおかしくない状況だ。
 けれども今は、そんな素振りも負の感情の迸りも感じられない。
 山梨くんも大人になったというか――やっぱりルイさんへの愛情が為せる業なのかしら?
 山梨くんに対する不特定多数の野次に対しては、後ろにいる南海の方が目からビームを射出しそうなくらい眼光を鋭くしていたかもしれない。
 南海はルイさんファンではあるけれど、山梨くんとルイさんの幸せを願う『山ルイ』推奨派だ。それに、山梨くんだって客として《WALTZ》に来てるのに、品のない野郎どもが『帰れ』とか『邪魔くせー』『うぜーな』『ブサイク』とか悪し様に罵っていることが赦せなかったんだろう……。
 ビッショウ様は――というと、ホントに何事も無かったかのように超然と店内を歩いている。
 ルイさんの幼なじみであるビッショウ様にも女性客の嫉妬にメラメラと燃える険しい視線が四方八方から突き刺さっているのだけれど、当の本人は痛くも痒くもない様子だ。
 山梨くんと同じく、こちらもルイさん絡みで逆恨みされたり憎まれたりすることに慣れ過ぎているのかもしれない。
 山梨くんも凄いけれど、ビッショウ様もやっぱり肝が据わっているというか――やっぱり最強の腐女子だわね。



中途半端なところで切ってスミマセンッ。いつもの如くちょっと長くなったので連投します(汗)
 
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2010.12.24 / Top↑
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