ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「イサヤくんには高校時代のアレコレを何気に洩らしてるのね、ルイルイ」
「ルイさん、山梨くんと出逢う前までは六楼さんの部屋に入り浸ってましたからね。――って、そんなに凄かったんですか、ルイさんの高校時代!?」
「フフッ。それはもう凄いなんてモノじゃないわよ。目眩く薔薇色のスクールライフよ。ルイルイが使用したコトのない教室って一つもないんじゃないかしら?」
 六楼さんが傍にいなくなった途端、ビッショウ様と南海が妄想会話をし始める。
 ルイさんの高校時代って想像もつかないけど、あれだけの美貌だからビックリするくらいモテたのよね、きっと。
「何だよ……目眩く薔薇色とか教室全制覇――とか……。ルイ――」
 山梨くんが悄然と項垂れる。
 ああ……可哀想に、ノックダウン寸前ね。
 山梨くんを虐めると、落ち込んだ後に更にルイさんへの愛情を燃え上がらせるのが解ってるからわざと煽ってるのよね、南海もビッショウ様も……。
 ルイさんの高校生活がどれだけ劇的なモノだったのか真実は謎だけれど、山梨くんにはちょっとだけ同情するわ。
 美神堂のCMに出演するまでのルイさんの生態系もあたしにはやっぱり謎だけれど――山梨くんと出逢ったことで荒んだ遊びとか全部止めたんだから、そこは胸張って誇っていいわよ、山梨くん!
 何だかんだ言っても、山梨くんはルイさんにちゃんと必要とされてるのよ。
 あのルイさんをちょっとでも振り向かせることが出来るなんて、心から凄いと思うわ!
「オレだって、制服姿のルイと放課後の教室で色々試してみたいのに……。夕陽に照らされる切ない表情のルイとかはだけた制服から覗く鎖骨とか、スゲー色っぽいんだろうな」
 耳をくすぐる山梨くんの無駄にセクシーな声に、あたしは急激に現実に引き戻された。
 ――え? 気になるのは若かりし頃のルイさんの派手な交遊関係じゃなくて、学校と制服という特殊なシチュエーションですかっ!?
 無意識に口元が引きつる。
 山梨くんは、きっとどんな苦境に陥ろうともスキャンダルをスッパ抜かれようとも――あくまでも山梨くんなんだろうな、と、あたしはこの時、妙に達観してしまった。
 スーパーアイドルにまで登り詰める人は器がデカイというか何というか――あたしのちっぽけな脳では想像も出来ないほどの未知なる宇宙を内包しているらしい。
 プライベートな山梨くんだけ見てると、本当にトップアイドルなのかどうかも疑わしく思えてくる。なのに、一度スポットライトを浴びて歌って踊り出すとオレ様的なスターに豹変するから不思議よね。
 山梨スタイル――恐るべし。
 さっきはうっかり山梨のくんのコトを凄いなんて勘違いしちゃったけど、真に凄くて素晴らしいのはスキャンダラスな話題に事欠かない山梨くんを見捨てることなくずっと応援し続けてくれているファンの皆々様だわっ!!
「一瞬でも山梨くんのコトを擁護したり、凄いと思ったあたしがバカだったわ。――早く帰ってこないかな、六楼さん」
 あたしは平淡な声で独りごち、グラスの水を一口飲み込んだ。
「あ、今、何か心の中で自己完結しただろ、園生沙羅。オレの何を擁護して、何に後悔してんだよ?」
「山梨くんが下ネタとかヘンタイ妄想全開なのは、全部ルイさんへの愛情ゆえかと思ったけど――やっぱりただのエロアイドルなだけだった、と幻滅したところです」
「や、今更だし、勝手に幻滅されても挽回のしようがないんですけど……。ってか、オレのルイへの愛はホンモノだからなっ! 『月華~蒼~』を聴けよ! オレ以上にルイのコト好きなヤツなんて、絶対いないからな!」
 山梨くんが真顔で抗議する。
 ……それくらい解ってるわよ。
 ルイさんに対する山梨くんの想いは、限りなく温かで優しく――そして、とても真摯で情熱的だ。
 ただ、時々それが彼方に吹っ飛ぶほどおバカで下品な発言するから、ちょっとイラッとするのよ! ムカついて、嫌味の一つでも言いたくなるだけよ!
「フフッ、『月華~蒼~』――アレ、かなり素敵な曲よね。次の同人誌のタイトルに使わせてもらうわね」
「それだけはスゲー嫌なんだけど、オレッ!」
 ビッショウ様の提案を山梨くんがすかさず却下する。
 そうよね。『月華~蒼~』は、山梨くんの持ち歌の中でもダントツに綺麗なバラードだもの。
 セクシーすぎるPVはともかく、『好き』って気持ちがフレーズの一つ一つから溢れ出していて、あたしでさえ胸がキュンキュンしちゃうほどの切ないラブソングだ。
 美しいメロディラインと澄んだピアノの音と山梨くんのセクシーボイスが相俟って、何とも言えないハーモニーを奏でているのよ。
 山梨和久――渾身の一曲。珠玉のバラード、って感じかしら?
 流石の山梨くんもビッショウ様の破廉恥漫画のネタにはされたくないのだろう……。
「嫌って言っても、新曲の情報が解禁になった時点で、とっくに印刷屋さんに入稿しちゃってるもの。折角だから蒼だけじゃなくて紅も描き下ろして、二冊セットにしてみたわ。そして、もう冬コミ用にバッチリ刷り上がってるわよ、二千セット。フフフフフッ。それより、沙羅ちゃん――ハイ、一足早いけれど私からのクリスマスプレゼントよ」
 さり気なく恐ろしい報告をし、ビッショウ様は走らせていた筆を止めた。
 あたしや山梨くんが冬コミ用の新刊とやらにツッコミを入れる隙がないほど素早くスケッチブックから一ページ引き千切り、スッとあたしの前に差し出す。
「ええっ、BL的な何かなら要りませ……ん……け……ど――――――!?」
 慌てて拒否しかけたあたしは、目の前に現れたソレを見て驚愕のあまりに絶句してしまった。
 正直、凄すぎて度肝を抜かれた。
 描かれていたのは、斜め四十五度を向いている六楼さん。
 けれど、いつもビッショウ様が描いているマンガ用のデッサンではなく、精緻でリアルな模写だったのよっ!!
 模写っていうと語弊があるのかな? 肖像画になるのかしら?
 とにかく、物凄く男前な六楼さんが描かれていた!
 な、何、コレッッッ!!
 カッコ良すぎるんですけどっっっ!!
 全身ではなくバストアップ画だったけれど、そこに描かれている六楼さんの端整な顔は今にも動き出しそうなほど緻密に描かれていた。
 何て言うの? 魂が宿っているように感じられるのよ。
 描き手の気迫が紙面から伝わってくるようだわ。
 鉛筆一本でココまで見事な肖像画を描けるものなのっ!?
 普段、美形男子同士の妄想しかスケッチしないのに、こんな隠し技を持っていたのね、ビッショウ様!
「うおっ、スゲーッ!」
「ああ、やっぱり六楼さんはリアル画でも男前ですね!」
 山梨くんが純粋な感嘆を洩らし、南海が歓喜に頬を紅潮させる。
「す、凄い……。物凄く素敵ですけど――マンガだけじゃなくて、ちゃんとした人物画も描けたんですね、ビッショウ様!?」
 あたしが素直に驚きと疑問を口にすると、ビッショウ様はいつもの不気味な笑い声を洩らした。
「アラ、私の本業を何だと思ってるのかしら、沙羅ちゃん?」
「R18BL同人作家です!」
 あたしが何の澱みもなく即答した瞬間、とっても珍しいコトにビッショウ様の動きがピタリと止まった。
「皆さんすっかりお忘れのようだけれど、私は――歴とした美大生よっ!!」
 更に稀有なコトにビッショウ様からツッコミを喰らってしまった……。
 ――あ、ホントにそんな設定忘れてたわ……!
 ってか、その個人情報、あたし、聞いたことありましたっけ?
 とにかくビッショウ様にBL漫画以外のスーパー特技があって、ビックリしたわ!
「げっ、美大生だったのかよ、フモコッ!? やたら絵は上手いな、とは思ってたけど――」
 山梨くんが信じられないモノに遭遇したかのように、ポカンと口を開けてビッショウ様を凝視する。
 その驚き、共感できるわ、山梨くん。
 いつも美少年や美青年をスケッチしながらBL妄想を熱く語っているから、四六時中同人誌を描いているイメージしかないのよね……。
 でも、そこはやっぱり腐っても名家のお嬢様――ってコトね。
 ちゃんと大学に通っている上に、才気溢れる絵心の持ち主だったなんて、意外すぎるわ。
 何が凄いって、美大に通いながら美形情報を収集してはスケッチに出向いたりしてるのに、大きなイベントでは必ず新刊を二冊以上は発行してるのよ、ビッショウ様って!!
 もう、その美形男子にかける情熱と執念には感服するしかないわ……。
「ありがとうございます、ビッショウ様」
 あたしは丹念に描かれた六楼さんの肖像画に視線を落とし、改めてその完成度の高さに惚れ惚れとしてしまった。
「沙羅ちゃんにはいつも《蝦夷舞鮨》でお世話になってるもの。これくらい当然のお礼よ。あっ、さっきの『R18BL同人作家』って、アレ――微妙に間違ってるから、そこだけは訂正しておいてくれるかしら?」
 早くも次のスケッチに取りかかりながら、ビッショウ様が神妙な表情であたしに告げる。
 ――ん? アレの何処が間違ってるんですか?
 ある意味、美大生より正しい解答だと思いますけれどっ!?
 ビッショウ様の言わんとすることが掴めずに、あたしが目をしばたたかせていると、
「私が描いてるのは『R18』じゃなくて『R23』よ。そこは正しく情報を伝えてくれないと困るわ」
 ビッショウ様は眼鏡の奥から真っ直ぐにあたしを見据え、不敵に微笑んだ。
「それって――」
 予想外のクレームに対して、あたしが唖然としてしまったのは言うまでもない。
 ソコは、わざわざ訂正するほど重要な問題なのっ?
 え、何ですかね、その中途半端な『R23』っていう指定は!?
 そもそも、ビッショウ様自体二十三歳になってないんじゃないですか?
 堂々と読ませてるけど、その区切りだと南海はもちろんルイさんや山梨くんもR指定にバッチリ引っかかってますからねっっっ!!
 あたしが二の句を継げずに口をパクパクさせていると、再び上のフロアで悲鳴が起こった。
 二階で起こったそれは徐々に階下にまで伝搬し、あたしたちのいる一階と中二階も歓喜の悲鳴に包まれる。
 お客さんたちが一斉に顔を上向ける。
 あたしも無意識に皆の視線を追っていた。

 真っ先に視界に飛び込んできたのは、美しくて長い二対の脚。

 気づけば、燕尾服姿のモン様とルイさんが螺旋階段を降りていた――



ようやく……ルイの脚……orz
おかしいな。4話目くらいでココに辿り着くはずだったのに( ̄ー ̄;

 
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2011.01.11 / Top↑
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