ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「一気に騒々しくなったと思ったら――やっぱりルイが降りてきたのか」
 不意に頭上から六楼さんの声が降ってくる。
 あたしはハッと我に返り、脳内を埋め尽くしていた南海&山梨コンビ批判を慌てて意識の外へ押し退けた。
 南海と山梨くんとビッショウ様の発言や行動に対していちいち疑問を持ったり追及していたら――キリがない。興味のないBL関連の知識が無駄に増えても困るし、何よりあたしの精神と体力が保たない……。
 南海たちの腐れた脳内を詮索するより、六楼さんの低めの美声と知的な顔にドキドキする方が遥かに健全で建設的だわ!
「ルイさん、今夜はちょっと楽しそうですね」
 ルイさんとモン様は螺旋階段の途中で脚を止め、何やらまたヒソヒソ話をしている。
 久し振りに《WALTZ》に戻って来られて嬉しいのか、雑誌やCMで観る姿よりもルイさんは活き活きとしているように感じられる。三年以上も務めたバイトだから辞めても愛着があるし、何だかんだ言っても《WALTZ》が大好きなんだと思う。
「仕事とはいえ半分遊びに来たようなものだからね、あいつは。まあ、ルイの息に抜きになるならそれでイイけど――」
 穏やかな口調で述べながら、六楼さんは片手に掲げた銀のトレーにもう一方の手を伸ばした。トレーの上にはあたしたちが注文した飲み物やケーキが載せられている。
 あたしは六楼さんがビッショウ様と南海に飲み物を配っている隙に、頂いたスケッチを折り曲げないように気をつけながら丸め、素早くバッグへと忍ばせた。
 六楼さん本人に肖像画の存在を知られるのは、何だか物凄く恥ずかしかったのよ。
 家に帰ったらゆっくり一人で鑑賞するのよ!
 改めて――ありがとう、ビッショウ様!
 この素敵な六楼さん画は、額に入れて大切に飾らせていただきます!

「ホントにもっと頻繁に遊びに来てくれてもいいのに! わたし、ルイさんのためなら毎日鼻血噴いても死なないわ!」
「いや、あんまり頻繁に来られてもソレはソレで迷惑だけど……。ああ、南海ちゃん――コレ、ティッシュ入れに使ってね」
 興奮冷めやらぬ南海に六楼さんが微苦笑を向ける。
 全てのケーキをセットし終えた後、六楼さんはとってもお洒落な銀の壺のようなものを南海の横に設置した。
 彫られた紋様が美しすぎて大きなタンブラーか花瓶に見えるけど――南海専用の屑入れなのね、ソレ……。
 そうよね、血の付着したティッシュをテーブルに載せておくなんて非常識だし、折角美味しいスイーツが用意されたのに食欲減退したら元も子もないモノね……。
「ありがとうございます、六楼さん」
 早速南海が古いティッシュをそこに捨て、新しいもので鼻をガードする。
「ルイさんとモン様、何を話してるのかしら? 気になってしょうがないんですけどっ! あの二人が並んでるのもちょー久々に観るし、シ・ア・ワ・セ! ああ、どうせならモン様、もう少し顔を上向けてくれないかしら? そうしたら、うっかりルイさんとマウス・トゥ・マウスになるかもしれないのにっ!!」
 南海の妄想は止まない……。
 あたしは、己の心を落ち着けるために六楼さんがセットしてくれたジンジャーティーに口をつけた。
 ルイさんとつき合ってる――あっ……と、あくまでも推定なので『つき合ってるらしい』が正しい表現ね――山梨くんが傍にいるのに、よくそんな妄想を口外できるわね、南海……。
 ってか、うっかり『マウス・トゥ・マウス』になんて発展しないわよ!
 モン様、最近お見合いして彼女が出来たって噂だもの!
 高校生でお見合いってどうなの――って、正直思うけど、名家の跡取りだからアレコレ複雑な事情があるのよね、きっと。
「アラ、モンモンのお見合いの件なら心配しなくてイイわよ、沙羅ちゃん。もちろん、私がさり気なくお見合いの場に同席して――穏便に破談にしてきたから」
 ビッショウ様がスケッチブックから一瞬顔を上げ、ニヤリと唇をつり上げる。
 ――うわっ、あたしったら、またブツブツ呟いてたのっ!?
 それにも驚きだけど、ビッショウ様のパワフルすぎる行動力と美男子への執念に仰天したわよ!
 お見合いの場に同席――って、明らかに『乱入』の間違いですよねっ!?
 ビッショウ様が『さり気なく』とか『穏便に』とか絶対ムリでしょう!!
 もう、端からモン様のお見合いをブチ壊しに行く気満々でしたよねっ!?
 己の支配下にあるイケメンは全て、BLに発展させる気ですか……?
 そ、そういえば、ビッショウ様のリアル弟の彼女の噂とか流れてこないわね。
 曽父江兄弟の上二人なんて結婚してもおかしくない年頃なのに、ちっともそんな気配ないわよね……。
 ビッショウ様の目が光っているうちは、自由恋愛も出来ないってコト?
 ……可哀想。
 可哀想すぎるわ、モン様!
 エリートゆえに幼稚部からのエスカレーター組で――そのせいで、ビッショウ様の美形レーダーに容易く引っかかり、ロックオンされるなんて……。
 あんなに整った顔してるのに。
 イロオトコなのに彼女作れないなんて――勿体ない。
「あの隣にいるのが、ルイのオモチャっていう――例のモンモンかよ? つーか、想像より綺麗でちょっとビックリした。ウチの事務所に即入れるレベルなんだけど」
 螺旋階段を見上げたまま山梨くんが素直に驚嘆する。
 モン様、確かに美形だけど――山梨くんに明言されると妙に説得力があるわね。山梨くんが所属する芸能事務所は、多種多様な美形揃いで有名だ。そこに即入れるレベルだなんて、《WALTZ》ってホントに凄いのね……。
「フフフッ。ルイルイが辞めた後、《WALTZ》のナンバーワンはずっとモンモンよ。幼稚部の頃から私とルイルイに鍛えられただけのコトはあるわね。いいえ、この美祥寺腐妄子の目に狂いはなかった、ってコトの証明ね。――モンモン!」
 ビッショウ様が眼鏡の奥で満足げに瞳を輝かせ、モン様に向かってヒラヒラと片手を振る。
 モン様が優雅な仕種でこちらを振り返る。
 切れ長の瞳が声の発生源を捕らえた刹那、《涼風の貴公子》と呼ばれる端整な顔からスッと微笑みが消失した。
 でも、それはたった一瞬のことで、モン様の口元にはいつもの涼やかな微笑が閃いた。
 さ、流石、現役ナンバーワンね!
 ビッショウ様という認識したくない存在を視界に入れても、僅か一秒で立ち直るなんて、強靱な精力の持ち主だわ!



……連投します(汗)
 
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2011.01.22 / Top↑
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