ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 モン様は、凜とした麗姿の持ち主だ。
 艶やかな黒髪をかなり角度のつけた前下がりのボブにしている。
 ちょっと変わった髪型でもバッチリ似合っちゃうから、美男子って羨ましいわよね。

 モン様に釣られたのか、ルイさんが長めの髪を微かに揺らしてあたしたちのテーブルへと首を巡らせる。
 カラコンを入れたブルーの双眸がこちらを見下ろし、ビッショウ様を始点にぐるりとテーブルを巡回する。
 隣にいる山梨くんが僅かに身を強張らせたけれど、ルイさんの視線は山梨くんの上で止まることなく六楼さんまで流れたところで、何事も無かったかのようにモン様に戻された。
 ビッショウ様や山梨くんを視野に認めても眉一つ動かさなかったわよ、ルイさん!
 昔のルイさんだったら『ちょーうぜェ』とか言って舌打ち鳴らしそうなのに、今夜は鉄壁のポーカーフェイスで仕事に徹してるわ! 
 色々あって、ルイさんも大人になったのね……。
 まあ、山梨くんに向かって何か反応を示すとファンが騒ぎ立てて厄介な事態に発展するかもしれないから無視しとけ――って、判断を下した確率の方が高そうだけど……。
 ルイさんは、黙っていれば誰もがハッと息を呑むような超綺麗なお兄さんだ。
 なのに、口は悪いし、性格は荒いし、大食いだし、面倒臭いことが大嫌いなちょっと困った人でもある。
 面倒臭いコトが嫌いなので、必然的にテキトーな発言も多くなる。
 そして、テキトーじゃない時は、本音をストレートに吐き出すので面食らうこともしばしばだ。
 そんなルイさんだけれど、M市民――殊に《WALTZ》フリークにはとっても愛されてる。退店後もこうして大勢のファンたちが駆けつけてくれるんだもん、凄いわよね。
 ルイさんとモン様は二言三言囁き合うと連れ立って一階へ降り立った。
 階段付近のテーブルで一気に歓声が高まり、空気が熱を帯びる。
 モン様はこちらを一度も見ずに、さっさと中二階へと続く階段へ向かった。
 そりゃそうよね。お見合いをブチ壊した張本人の顔なんて見たくないわよね……。
 ――っと、二階から中二階へは一度螺旋階段を降りて別の階段を登らなきゃいけないのよ。二階を客席として改装した時に、きっと何か不都合があって中二階とは直に階段を繋げなかったんだと思うわ。
 ルイさんは――と見ると、手近にあるテーブルから普通にオーダーを取っていた。親衛隊の方々なのかな? 美人なお姉さんたちがとても親しげ&嬉しそうにルイさんと言葉を交わし、縦長のプレゼントボックスを次々にルイさんへ渡している。
「えっ? アレ、もしかして――ウチの《ブッシュ・ド・ノリマキ》?」
 あたしは小さな驚きに見舞われ、思わず声に出して呟いていた。
 お姉さんたちがルイさんにプレゼントしているのは、どう見ても我が《蝦夷舞鮨》の包みにしか見えなかったのよ!
 ルイさんは笑顔でそれらを受け取ると、慣れた仕種で脇に立つ男性に預けていた。
 見たことのない殿方ね。いつの間にルイさんの隣に寄り添っていたのかしら?
「あ、ルイのマネージャーだ」
 山梨くんの一言で男性が誰なのかアッサリと判明する。
 なるほど。マネージャーさんか。ルイさん宛のプレゼントを管理してるのね。マネージャーの脇にはカートがあって、そこにルイさんが受け取ったプレゼントが積まれている。
 け、結構《ブッシュ・ド・ノリマキ》の箱が見えるのは、気のせいかしら?
「流石は《ブッシュ・ド・ノリマキ》ね。ルイルイのために生み出された、最高のクリスマスプレゼントだわ。ルイルイの丸かぶりシーンが想像よりもたくさん見られそうで――とっても嬉しいわ。フフフッ」
 ビッショウ様が邪な笑みを口の端に閃かせる。
 だから、大将の心意気を悩ましい妄想に繋げないで下さいってばっ!
 確かに予想以上の《ブッシュ・ド・ノリマキ》の数で、あたしもビックリしてるけど。
 大将ったら今夜は巻きに巻いたのねっ! 《WALTZ》――というか、ルイさんのために張り切ってくれたんだわ。ありがとう、大将!
 ――で、大将の気迫が詰まった極太巻きたちが、どんどんカートに積まれて裏へと運ばれてゆくワケです……。
 ってか、マネージャーさん、何往復してるんだろ? 大変そうだな……。
「ああ、ルイさん、早く来ないかしら! けど……親衛隊ゾーンを抜けるの、手間取りそうね。わたしだって、ルイさんと喋りたいのに!」
 南海が語気も荒く告げ、嫉妬にメラメラと燃える眼差しで遠くのテーブルを睨めつける。
 その気持ちも解るけど、親衛隊のお姉様お兄様たちから見れば、南海の方が羨ましがられる――っていうか、恨まれてると思うわよ……。
 ルイさん大好き鼻血っ娘として有名になっちゃってるし、ルイさんの幼なじみでもあるビッショウ様と仲は良いし、何てたってルイさん本人にも気に入られてるしね。
 うん、よく解らないけど――ルイさんは鼻血っ娘である南海のコトを買っている。六楼さんのマンションにあったルイさん専用のベッドをあげちゃうくらいだから、一応可愛がってるんだと思う。まあ、半分以上は単に面白がってるだけかもしれないけど……。
 とにかく、他のファンよりルイさんに近い距離にいることは間違いない。
 ルイさんファンではあるけれど、何故だか熱烈な『山梨×ルイ推進派』だということがダダ漏れらしく、これまで面と向かって言いがかりを付けられたり、嫌がらせを受けたことはない。それだけは南海のBL妄想の勝利かもしれないわね。
「オレだって、ルイと喋りたいんだけど――」
「何言ってるのよ? 山梨くんはほぼ毎日顔を合わせてるくせに、《WALTZ》のファンと張り合わないでよ!」
 南海の言葉に性懲りもなく山梨くんが乗っかろうとしたので、あたしは間髪入れずに呆れた眼差しを送ってあげた。
「十二月に入ってから超忙しくて、ロクに顔も見てない。珍しく明日の昼まで身体空いたから、店には申し訳ないけどこうして逢いに来てるんだろ」
 ルイさんの後ろ姿に視線を馳せ、山梨くんがスッと目を細める。仕事で疲れているせいなのか、その横顔はとても切なく、苦しげにさえ見えた。
 ……また、うっかり忘れるところだったけど、超がつくほどのアイドルなのよね。
 年末年始の特番収録や生放送やらCM撮影やらコンサートのリハやら新曲のプロモーションやらで、息を吐く暇もないほどの激務の最中にいるのよね。
 おまけに、一緒に暮らしているのに好きな人とは擦れ違いばかりで――仕事に忙殺され慣れているはずの山梨くんでも流石にフラストレーションが溜まるわよね。
 限界が迫ってきたから、ちょっと時間が空いた隙にルイさんの顔を見にきたのか……。
 やっぱりルイさんに対しては一途で素直で健気よね、山梨くんて。
 そこまでストレートに『好き』って感情と行動を表に出せるのって凄いし、少し……羨ましいな。
 あたしは未だに六楼さんが傍にいるだけで心臓バクバクで挙動不審になるし、六楼さんはあんまり感情が顔に出ないタイプだからなぁ……。
 それに、六楼さんは大学に通いながら『紅蓮の鏡月』関連の仕事もこなさなきゃいけないので、必然的に逢える時間も限られてくる。
 その点では、あたしも山梨くんと似たようなものなのかな?
 最近全然デートもしてないし、短いメールのやり取りだけだし――まあ、つまるところ、あたしも『六楼さん不足』だからこうして《WALTZ》に足を運んでいるワケです。
 ――そうよ!
 南海やビッショウ様や山梨くんのせいですっかり当初の目的を失念してたけど、あたしは大好きな六楼さんに逢いに来たのよ!!



 
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2011.01.23 / Top↑
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