ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 ルイさんのブルーの双眸が穏やかな光を湛えている。
 それだけでも珍しいのに、中性的な美貌には眩いばかりの笑みが広がっていた。
 ――き、綺麗っっっ!!
 ルイさん贔屓じゃないけど、あまりのに美しさにあたしの胸はドキッと跳ね上がった。
 斜向かいでは南海が大量に噴き出した鼻血をティッシュで抑えながら、潤んだ眼差しでルイさんに見入っている。
 何もしなくても端麗な顔立ちなのに、こんな最上級の笑顔を見せられたら――誰だって瞬時に恋に堕ちるわよ! 惚れるわよっ! 胸トキメクわよっ!
 ああ……いつ見ても男性とは思えないほどの美しさと神々しさだわ!
 超アイドルである山梨くんが隣にいるのに申し訳ないけど――ルイさん以上の美青年をあたしは見たことがない。
 ホントにM市の宝だわ、ルイさんって!
 と、あたしが絶賛したのも束の間、
「あー、だりー」
 ルイさんの整った顔からはアッサリと微笑みが消えた。
「つーか、このテーブルに営業する意味ねーし、愛想振りまくの面倒くせーし――挨拶したからココの接客もう終わりなー」
 眉根が軽く寄せられ、唇の片側が皮肉げに歪められる。唇から洩れる声には、明らかな気怠さが織り交ぜられていた。
 さっきまでの超絶美しい笑顔の片鱗さえ窺えない。
 ルイさんは――すっかりいつものテキトーなルイさんに戻っていた……。
 素晴らしすぎる変わり身の速さだわ。
「じゃあ、何でココに来たんだよ?」
 六楼さんが非難の眼差しでルイさんを見下ろし、冷ややかに言葉を放つ。
「――あ? イサヤがいるから」
 ルイさんが片眉を跳ね上げ、六楼さんを見返す。
「だから、何で?」
「息抜きに決まってんだろーがッ!」
「息抜きじゃなくて、サボリだろ?」
 六楼さんの冷静な切り返しに対して、ルイさんのこめかみがピクリと引きつった。
「サボリじゃねーよ! キッチリ仕事してんだから、この席くらい楽にさせやがれッ。二階の連中、予想以上に滾ってて体力消耗してんだよッ!」
 ルイさんの綺麗な唇から怒気を孕んだ言葉が零れる。
 何だかとっても懐かしいな。六楼さんとルイさんの、このやり取り。
 ルイさんが現役だった頃は、いつも六楼さんがルイさんのサポート役に徹してたのよね。
 ルイさんは、時々あたしたちには理解出来ない持論や怒りを主張することがある。ビッショウ様や南海とはまた人種が異なるけど、ルイさんもあたしたちとは別の次元で物事を捉えている人なのよね、きっと……。
 とにかく、美しい顔に似合わず突飛な発言をすることも多い。以前、山梨くんの猛アタックを躱すためだけに『六楼さんに惚れてる』って、物っ凄いテキトーに嘯いた前科もある……。
 六楼さんは渋い表情を作りながらも、そんな超マイペースなルイさんを根気よく窘めたり諫めたりし続けてきた。
 でもって――最終的にはいつも六楼さんが折れるのよね。
 うん、六楼さんはルイさんにとっても甘い。
 そして、あたしはそんな六楼さんのことが大好きだし、六楼さん本人もルイさんに大甘な自分を嫌いじゃないんだと思う。
 今だって口調は素っ気ないけど目は優しいもの、六楼さん。
「しょうがないな。店長が睨んでるから五分だけだぞ」
 案の上、溜息をつきつつも六楼さんはルイさんを追い払ったりせずにこの席にいることを認めてくれた。
 ――っていうか、満員御礼のこの状況でルイさんが一つのテーブルに五分もいていいのかしら? ちょっと他の席には申し訳ない気もするけど、南海や山梨くんにとっては間違いなく嬉しい出来事よね。
「あ? テンチョなんてほっとけよ。オレが一度もブチ切れずに二階から降りてきただけでも有り難いと思いやがれ。――くそッ。二階のヤツら、久し振りだからって調子に乗りやがって、太ももとか腰とかケツとかガンガン触ってくんだぜッ! ちょーうぜェ!」
 ルイさんが忌々しげに吐き捨て、舌打ちを鳴らす。
 お客さん相手に『うぜェ』と明言できるあたりは、変わってないわね、ルイさん。
 接客業としては不適切な発言だけれど、太ももとかお尻とかここぞとばかりに触りまくるお客さんも図太い神経の持ち主だわ……。昔から凄かったけれど、ルイさん熱烈愛好家たちの『触りたい衝動』も相変わらずなのね。こんなにボディタッチされるケーキ屋の店員なんて、ルイさん以外に存在しないと思うわ。
「ちょっ……! 太ももやケツ――って!? 容易く他の男に触らせんなよッ!」
「あぁあッ!? 避けようがねーし、男だけじゃなくて女もガッツリ触ってくんだよッ! つーか、フザけんなよ、山梨。てめーもライブで散々同じコトやられてんだろーがッ!」
 ルイさんの発言にショックを受けたらしい山梨くんが慌てて苦言を呈する。だけど、それはルイさんの鋭い一睨みと怒声により瞬く間に封じ込められた。
「や……はい、確かに……その通りです――」
 山梨くんがしゅんと項垂れる。
 ライブでアリーナに降りたりすると、猛烈な勢いで手を握られたり衣装引っ張られたりしてるもんね、山梨くん。《WALTZ》でのルイさんもソレに近い状態なのよ。ケーキ屋なのに。ホントに信じられないけどね……。
 それにしても山梨くん、《WALTZ》の店内だと大人しいわね。普段とは雰囲気の異なるルイさんを目の当たりにして、緊張してるのかな?
「――で、ルイさん、具体的にはどの辺りをガンガンまさぐられて、何処をガッツリ握られたんですか? 許されるなら、ソレ、わたしも触りたいんですけど?」
 南海が恐ろしく熱い眼差しでルイさんを見つめ、真摯な声音で問いかける。
 しょ、正気なの、南海ッッッッ!?
 外見は可愛いのに、何て罪深くて欲深いコトを口走るのよっ!!
 南海の台詞を聞いた瞬間、あたしはもちろん六楼さんと山梨くんも驚愕に口をポカンと開けたわよ。
 ビッショウ様がいつもの『フフッ』という意味深な笑みを零して、妹分である南海を微笑ましく見守っているのは――まあ、本当は理解なんてしたくないけれど、何となく解る。
 けど、言われた張本人であるルイさんが誰よりも平然とした顔で南海の言葉を受け止め、
「ん? 何だよ、南海ちゃんも触りてーのかよ? まあ、減るモンじゃねーし、そんなに触りてーなら別に――――」
 って、サラリと返事をしかけたのは、どう考えてもおかしいと思うわ! 
 倫理的にも許されないでしょ!
 変なところで南海を甘やかさなくてイイのよ、ルイさんッッ!!
 その可愛がり方は、紛れもなく道を誤ってますっ!!
 そして、南海の鼻血を無駄に噴出させるだけですからねっっっ!!
「バッ……減らなくてもダメに決まってんだろッッッ!」
 山梨くんがガタッとイスを鳴らして勢いよく立ち上がる。
「いくら弟子のたっての願いでも、そこは迂闊に聞き入れるなよ、ルイッ! 弟子も邪な妄想はイイけど、絶対に実行に移すなよッ!」
 山梨くんが必死の形相でルイさんと南海に猛抗議する。
 ――ちょっと、山梨くんっ!? 立ったら目立つし、声が大きいわよ!
 店中の視線が自然とこちらに集まってくるのを感じて、あたしは内心ヒヤヒヤとした。
 いや、ヒヤヒヤどころか……かなり嫌な予感がする。
 怖々と山梨くんを見上げたあたしの視界に飛び込んできたのは、ギュッと握り締められた拳だった。
 あ、ますます不吉な予感。
「山梨くん、とりあえず落ちつ――――」
 あたしが制止の声を発するよりも僅かに早く山梨くんの唇が開かれる。
「ルイの全部は――オレのモノだッッ!!」
 山梨くんが憤然と断言した刹那、店内が水を打ったようにしんと静まり返った――



……若干下品でスミマセンッ(((゜д゜;))) 25話以内には終わると思います(汗)
 
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2011.01.30 / Top↑
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