FC2ブログ

ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑

 ルイさんと山梨くんのツーショットを拝みたい女性ファンの視線が、あたしたちの席には容赦なく降り注いでいる。
 スタッフを押し退けたり、チェーンを無視してまで階下に降りくるお客様がいないことだけが幸いね。
 何故だか、その辺は昔からルイさんファンは節度を弁えている。
 ルイさんの髪や手にはガッツリ触りたいのに、他のお客さんのテリトリーは侵さない――って、あたしからみればかなりおかしな不文律だけれど。
 それにしても、ギャラリーはものの見事に女性ばっかりね。
 男性ファンは、ルイさんが山梨くんと視線を交わす姿さえも目の当たりにしたくないのかも……。
 腐女子さんはBL変換で妄想を楽しめるけど、純粋なルイさんヲタ男子は心にグサグサ突き刺さるモノがあるから到底視野に納められない――てコトなのかしら?
 いや、こんな考察をのんびりしているあたしもおかしいわね……。
 とにかく、ルイさんは今も昔も変わることなく男女共に愛され続けている。

「あ、ルイルイ、コレ――クリスマスプレゼントね」
 ルイさんファンの妬心に塗れた視線を歯牙にもかげずに、ビッショウ様が片手で《ブッシュ・ド・ノリマキ》の箱をルイさんの方へ押し遣る。
 もちろん、鉛筆を握ってる手はスケッチブックに何かを高速で描き込み続けてるわよ!
 絵の内容はともかく、描くことに対しては頗る情熱的だし、その手腕は正に神の領域だわ!
『グレキョ』と『山ルイ』同人誌界で『カリスマ絵師』と崇められるのも解らないでもない……。
「何だよ、家で渡せよ。持って帰んの、面倒だろーがッ……!」
 ブツブツと文句を垂れながらもルイさんはビッショウ様からの贈り物を受け取る。
 ルイさんの実家である曽父江家とビッショウ様が住む有馬家は、お隣同士だ。
 本当ならわざわざ《WALTZ》へプレゼントを持ってくる必要なんてないのよね。
「だって、ルイルイ、最近コッチのマンションに帰ってこないじゃない。それにナマモノだし、《蝦夷舞鮨》に寄って来たついでだからイイのよ」
 ビッショウ様がスケッチを進めながら淡々と応じる。
 ナマモノ――っていうか、ビッショウ様のは海鮮抜きの馬鹿デカい玉子巻きじゃない!
 うっかり口に出してツッコミを入れると面倒な方向に話が展開される危険性があるので、敢えてツッコまないけど……。
「気持ちは有り難ェけど、大将に迷惑かけてんじゃねーよッ。――ってか、何だか知らねーけど、今日のプレゼント、異常に《蝦夷舞鮨》の折りが多いんだよな」
 ルイさんが更にボヤきながら、いつの間にか隣に立っていたマネージャーさんにプレゼントボックスを渡す。
 カートの中では、またしても《ブッシュ・ド・ノリマキ》の箱が積み重ねられていた。
「ルイさーん! わたしからもプレゼントですッ!」
 南海が立ち上がり、《ブッシュ・ド・ノリマキ》の箱をルイさんに差し出す。
「わたしのは凄いですよ。なんてたって《ジョウネツーナ》バージョンですからっ! ルイさん、物凄く華奢なのにいつもいつも山梨くんに激しくアレコレされてると思うから、貧血にならないように赤身を多めにしてみました!」
 意気揚々と告げて、南海はプレゼントを渡す。その際、ルイさんの手をギュッと握り締めることもしっかり忘れなかった。
 ……南海、大好きなルイさんが相手でもどんどん恥じらいが薄れてきてるわね。
「ちょっ……弟子ッ! 余計な妄想すんなよッッ!」
 山梨くんが顔を真っ赤に染めながら叫ぶ。
 南海の声が届いたのか、二階のギャラリーからも嬉しげな悲鳴が連続して起こった。
「ルイさんを愛するがゆえの気遣いよ、山梨くん! だって、噂によると山梨くんの山梨くんてアイドルらしからぬ壮大なスケールだって聞くし、そんなのにわたしのルイさんが夜毎弄ばれて、耐えられるはずが――――ヤダッ、素敵すぎるッッッ!!」
 南海の鼻腔からつと真紅の液体が伝い落ちる。
 ちゃっかりルイさん本人の手を握りながら、よくもまあそんな腐れた妄想を口走れるわね、南海……。
 鉄分が必要なのは、ルイさんじゃなくて明らかに南海よね。
 その《ブッシュ・ド・ノリマキ》自分で食べた方がいいんじゃない?
「何だよ、その噂……フザけんなよッ……。壮大なスケールって、どこのどいつが見たんだよッ……? 兜塚さんの山梨タワーもアホみたいなデカさだし……オレのイメージ、コレしかないのかよ? オレ、超アイドルなのに……アイドルなの……に――――」
 山梨くんが悄然と呟く。最後の方はもう掠れすぎて聞こえなかったわね。
 一応、アイドルだという自覚はあるのね。
 でも、ライブのMCとかラジオで下ネタ連発してるし、今更『アイドルには子アイドルなんてついてません!』とかいうブリッコな態度とられても、誰も信じないわよ!
 ってか、山梨くんて、そもそもが『爽やか純真アイドル』路線で売ってないじゃない。何でこの期に及んで変な羞恥心が芽生えたんだろ? 謎すぎるわ、山梨……。
 多分、さっきの失態を引き摺りまくってるのね。
「ってコトで、ルイさんと山梨くんの素敵な夜のために――マグロ祭りの《ブッシュ・ド・ノリマキ》です」
 南海が満足げにニッコリと微笑む。
「おうっ、サンキューな。大将、どんだけマグロ巻いたんだよ? スゲー重みあんだけど? つーか、喰うのちょー楽しみだぜッ」
 ルイさんが南海に微笑みを返しながら、プレゼントボックスをマネージャーさんへ渡す。
 ――うッ、な、なんて綺麗な笑顔なのっ!
 燕尾服なんて着てるから、ホントにどこぞの国の貴族か王子様みたいなんですけどっっ!
 ルイさんのこんな屈託のない笑顔なんて、物凄く久し振りに見た気がするわ!
 嘘偽りなく腹の底から《蝦夷舞鮨》の太巻きが大好きなのね、ルイさんっ!
 ちょっと捻くれている上に意地っ張りなルイさんだけど、太巻きに対する情熱と好意だけは素直に顔にも態度にも出すのよね。
 太巻きに対する愛情表現を百分の一でも分けてあげたら、山梨くんなんて泣いて喜ぶんじゃないかしら……?
 南海が妄想した壮大なスケールの山梨くんとか夜毎云々の件は、鮮やかにスルーしたわね、ルイさん!
 否定も肯定もせず、憤るわけでも照れるわけでもなく、泰然自若と南海から《ブッシュ・ド・ノリマキ》を受け取るなんて、凄すぎる神経の持ち主だわ!
 やっぱりルイさんも綺麗なだけのお兄さんじゃなくて、かなりのツワモノよね……!


次が長くなりそうなので、今回は短め更新です(汗)
 
← NEXT
→ BACK

スポンサーサイト
2011.02.09 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。