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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「ルイ――もうとっくに五分過ぎてるし、そろそろ仕事再開しろよ。店長の無言の圧力、ビシビシ感じるんだけど……」
 あたしの強い想いが届いたのか、六楼さんが切れ長の双眸に怜悧な光を灯し、ルイさんに注意を促す。
「あ? もうそんなに時間経ったのかよ? テンチョも案外懐のせめーオトコだな」
 ルイさんが店長の定位置であるカウンターにチラと視線を流し、忌々しげに舌打ちを鳴らす。
 いや、店長を悪者めいた感じにしても――サボってるのは、ルイさんですからね! 紛れもなく、今は仕事中ですからねっ!
 そして、ルイさんがこの席に来てから五分どころか十分以上は経過してますからね!
 店長の味方をするワケじゃないけど、店長はキッチリ仕事してるだけで何も悪くないと思います! 寧ろ、山梨くんや南海やビッショウ様のおかしな妄想がルイさんの脚をこの場に縫いつけているんじゃないでしょうか!?
 そう、まるで呪いのように――
 ……ヤ、ヤダッ。山梨くんはともかく南海とビッショウ様は、ホントに呪術とかサラッと出来そうだから洒落にならないわね!
 ビッショウ様は古より連綿と続く旧家のお嬢様だから、もしかしたら先祖は安倍家の何某とか賀茂家の何某とかだったりして――陰陽道とか極めているのかもしれないわ!
 南海は……南海は他人の心を読めちゃう不思議な子だし、ルイさんをBL界のスターにするための秘術として、邪馬台国の卑弥呼が駆使したと云われる鬼道とか独学でちゃっかりマスターしてる可能性も無きにも非ずね!
 陰陽道と鬼道――二つの法力が相乗効果を発揮して、《WALTZ》とルイさんに対しての強大な呪法を完成させているんだわ!
 彼女たちのルイさんに対する強烈な愛情が怨念と化し、ルイさんの身を雁字搦めに呪縛してるのよ……!
 こ、怖い! 怖いわ、この人たちッッッッ!!

「いや、ちょっ……沙羅ちゃん……!?」
「何か咲耶たちとは全く別方向の妄想が展開されてっけど? スゲーな、沙羅ちゃん。オカルトマニアだったのかよ」
 不意に、六楼さんとルイさんの声が耳に届き、あたしはハッと動きを止めた。
「沙羅ちゃん……洩れてるから、心の声――」
 六楼さんの困ったような声。
 ――うわっ、ホントにヤダッ! あたしったら、またブツブツ独り言を放っていたのっ!?
「…………も、洩れてましたか? ちなみに……ど、どの辺りから……ですか?」
 あたしは羞恥に顔を真っ赤に染めながら恐る恐る六楼さんを見上げる。
「うん、洩れてた――『まるで呪いのように』あたりから。あっ、でも、気にするコトないよ! それに、ソレ――そんなに想い入れがあるなら、沙羅ちゃんも小説書いてみればいいんじゃないかな? 陰陽師の末裔と卑弥呼の生まれ変わりと美形男子高生のBL伝奇ファンタジー。悪くないと思うよ。もし書くなら――俺、水城さんに紹介するから!」
 六楼さんがやけに早口に言葉を連ねる。
 ……六楼さんなりのフォローだってコトは解るけど――どうしてソコで『BL伝奇ファンタジー』が出てくるのッ!? 《WALTZ》の制服を纏っていても心はBLファンタジー作家『冬敷和魔』なのねっっ!!
 書きません! 絶対に書きませんから!
 あたしに書けるワケないでしょ、BL小説なんて!
 それ以前に、物語自体書ける気が全くしませんからっっ!!
 ちょっと変な励まし方だったけど――ありがとう、六楼さん。その優しい心遣いだけは、胸に暖かく染みたわ。
 ――あ、水城さんっていうのは、六楼さんを担当している編集者さんのコトです。
『紅蓮の鏡月』を世に知らしめた影の功労者だけれど、今は関係ないので詳しい説明はナシにするわね。
 ……ってか、BL一色に染められた『さざなみ文庫』の人たちとは極力関わり合いになりたくないのよっ!
「あー、まっ、オレもキライじゃねーけどな、沙羅ちゃんの妄想。つーか、イサヤが書けよ。オレ、陰陽師のコスプレしてやってもいーぜ」
 いつもの如くルイさんが物凄くテキトーな言葉を放ち、六楼さんに向かってニヤリと唇をつり上げる。
 直後、「ブッ!」という奇怪な爆裂音が響いた。
 見ると、またしても山梨くんがカフェモカを噴き零し、南海が鼻血を増量させていた。
「ル、ルイが髪を結って、狩衣とか烏帽子とか扇とか――スゲー似合うッ! 想像しただけで、垂涎モノなんだけどっ! 畳に押し倒して、乱暴に髪ほどいて、狩衣ちょーはだけさせたいッッ!」
「素敵! ルイさんの平安装束ッ! 萌える……萌えるわッッ! でも、今のストーリー展開だと陰陽師は攻めっポイわよね? わたし、ルイさんには永遠に右側にいてほしいんですけど! ああっ、美形男子高生を手に入れようとしたのに――気づけば、うっかり立場逆転してたっていうのもイイわねッ! コスプレしたら絶対写メ送って下さいね、ルイさんッ!」
 ……ホントにこの人たちは懲りないわね。
 ルイさんに関しては次から次へとイケナイ妄想が生まれてゆくなんて――もう一種の才能だわ。
「もう約二名、勝手に萌えたみたいだし、ルイのコスプレだけあれば俺が書かなくてもいいんじゃないか……? それより、ホラ――店長の眉の角度が微妙に上がったから、さっさとホール廻ってこいよ」
 六楼さんがカウンターを確認した直後に口元を引きつらせ、再度ルイさんを促す。
「しょーがねェな。行ってくっか。オレがいたら沙羅ちゃんたちも、ゆっくりケーキ喰えねーしな。――んじゃ、各自バレないように時間差で《WALTZ》出て、駐車場に集合な」
 ルイさんが周りのギャラリーを軽く見回す。たったそれだけのことで女性陣から歓声があがったわよ。ルイさんの言う通り、ルイさんがこの場にいる限り、あたしたちのテーブルは好奇の視線に晒され続けるのよね……。
「つーか、てめーはどうやっても目立つよな……」
 ルイさんが山梨くんをじっと見下ろし、気難しげに眉根を寄せる。
 そうかと思うと急に何かを閃いたらしく、視線をパッとビッショウ様へ転じた。
「オレ、仕事に戻るし――咲耶が零治にメール打っとけよ」
「フフフッ。山梨くんのボディラインだとリッキーの服がいいかしらね? とりあえず、零ちゃんにタクシーで戻ってくる時、極力山梨スタイルとはかけ離れた服をピックアップしてこい――って、指令を出しておくわね」
 ビッショウ様がケータイを取り出し、物凄い速さで操作し出す。ルイさんの真意を完全に汲み取れるなんて、幼なじみならではの高いコミュニケーション能力ね。
「あっ、ちょっ、咲耶さん、店内ケータイ禁止ですけどっっ!?」
 六楼さんがハッと目を瞠り、慌ててビッショウ様の手ごとケータイをテーブルの下に隠す。
「善は急げ――よ。それに、もうとっくに送信したから心配無用よ。店長にはリッキーの寝顔でもメールしておくわ」
 ビッショウ様が余裕の微笑みを浮かべる。
 筆頭株主じゃなくて有馬家の令嬢でもなければ――とっくに《WALTZ》から追い出されてるわよ、ビッショウ様!
 それより何より、今夜は密かにずっと気になってるんだけど――どうして店長の怒りを逸らすのに璃稀さんアイテムが必要なのっ!?
 店長にとっての璃稀さんって、どんな位置づけなのっ!?
 ううっ、気になる!
 ――けど、訊いたらガッカリするだけの理由しかないに決まってるんだから、絶対に訊いちゃダメよ、沙羅ッ!
 あたしが璃稀さんと店長のコトを払拭するためにブンブンと頭を振るのと同時に、ルイさんの視線が山梨くんへと流された。
「――ってコトだから、てめーは出る前に裏で零治が用意した服に着替えろよ」
 ルイさんの指示に山梨くんが真顔で頷く。
 ……何故だか、みんな割と真剣だから言い出せないけど――そんな手間暇かけるより、レージが来た時に山梨くんだけ《ブッシュ・ド・ノリマキ》と一緒にこっそりタクシーに乗せちゃえばいいんじゃない?
 で、山梨くんの車をルイさんが運転して帰ればいいんじゃない?
 南海とビッショウ様はルイさんが運転するその車でも、先に何処かでタクシーでも拾って帰ればいいんじゃない?
 それで万事オッケーよね?
 山梨くんとルイさんがファンに囲まれる率も低くなるし、二人でいるところをスクープされるリスクも減るわよね?
 なのに、どーしてこの人たちは『山梨くんが運転する山梨くんの車で、四人揃って有馬家へ帰る』って予定をこんなに頑なに崩したくないのかしら?
 ――えっ? 言ってあげた方がいいの? 教えてあげた方が親切なのかな?
 でも、山梨くんはアクション映画に出て来るスパイのように凛々しい顔つきですっかりやる気満々だし、レージからの返信を待つビッショウ様もライバル企業に潜入した遣り手の社長秘書みたいな華やかかつ勇ましい風格があるんですけどっ!?
 何、この人たち?
 あの……コレ、そんなに壮大で危険なインポッシブル的ミッションじゃありませんからねっ!
 やっぱり、あたしが指摘するべき?
 ――ハッ! 大丈夫、まだ最後の防波堤としてレージがいるわ!
 レージ、まさか言われた通りに璃稀さんの奇抜な服を持ってくる気じゃないでしょうね? 
 レージは比較的フツーの男子高生だから、流石にあたしと同じトコに気づくわよね?
 あたしが内心ドキドキしながらビッショウ様を眺めていると、すぐにケータイのボディが震える独特の音がテーブルの下から聞こえてきた。
「あっ、零ちゃんからだわ! フフフフッ」
 ビッショウ様が楽しげに笑い、素早くテーブルの下からケータイを取り出した。既にメールは開封済みらしく、レージからの返信が皆に披露される。
 液晶には、
『任務完了 念のためにピッタリフィットの革パン専用カップも持ってく』
 という文字が綴られていた。
 早ッッッ! 行動が迅速すぎるわよ、レージッ!!
 ってか、何ですか、この文面!?
 ピッタリフィットの革パン?
 専用のカップ!?
 何、ソレ?
 一体、どんな破廉恥なモノを山梨くんに着せる気よ!?

 バカじゃないの、レージィィィィッッッッッ!!


目指せ、30話完結!(((゜д゜;)))
 
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2011.02.16 / Top↑
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