ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 凄い――とは言っても、あたしが勝手に推測した『ルイさん、好きなものランキング』なんだけどね……。
 ルイさん当人は、ちょっとやそっとのコトでは『好き』という言葉すら発さない特異な性格をしている。
 かつて《蝦夷舞鮨》の太巻きのことを『好き』だと明言したのを聞いたきりだ。もちろん、それ以外は全く耳にしたことはない。
 なので、まだまだつき合いの浅いあたしは、ルイさんが何を気に入り、何に好意を抱いているのか――イマイチ把握できていなかった。
 ルイさんの複雑怪奇な思考回路を完全に理解出来るのはねビッショウ様だけのような気がするわ……。

「あー、何ていうか……その――――」
 ふと、山梨くんがバツの悪そうな表情で口を開く。
 思いがけず衝撃的な告白を聞いちゃったからリアクションに困っているらしい。
 昔の恋人の話が飛び出すのを覚悟して質問したら――全くかけ離れたバイオレンスな真相を穿り返しちゃったんだものね。
 ルイさんだって歴とした男なんだから『寝惚けた女の子と格闘して――負けた挙げ句に重症』だなんて矜持が許さないし、本当なら死ぬまで記憶の奥底に封印して誰にも明かしたくなかったんだろうなぁ……。
「嫌なコト思い出させて――っていうか、オレ、スゲー無神経で……ゴメン、ルイ……」
 山梨くんが一言一言を噛み締めるようにして誠実に謝罪を述べる。
「あ? ホントになッ……! てめーが妙ちきりんな憶測すっから、スゲー久し振りに《地獄の正月》思い出しちまったじゃねーかよッ! ムカツクヤローだぜッ……!」
 ビッショウ様から山梨くんへと視線を移したルイさんが、語気も荒く吐き捨て、舌打ちを鳴らす。
 ルイさん……よく舌打ちを鳴らしてるけど、その時の忌々しげな表情さえも美しいわ!
 あまり褒められたモノじゃない言動がこんなに似合う美青年なんて、中々いないわよね。
 まあ、舌打ちされた方の山梨くんは、大好きなルイさんに叱られて心臓が縮み上がっているかもしれないけど……。
「ホントに……スミマセンでした」
「ったく――次にオフ重なったら、ぜってーこき使いまくってやるッ!」
 ルイさんがフンッと鼻を鳴らす。
 山梨くんが何をさせられるかなんて想像したくもない――そもそもルイさんのコトだからオフが重ならなくても山梨くんに無理難題とかふっかけて、反応を愉しんだりしてるんじゃないかしら?
「大体てめーは、直接口にしないで延々と脳内妄想に励むから、イロイロとややこしくなんだよッ! 面倒くせーのキライだ、って言ってんだろーがッ! 次からはヘンタイ妄想する前に訊きやがれ! 九割答えてやんねーけど、一割くれーなら気が向いたら答えてやっからよッ」
 完全に上から目線でルイさんが乱暴に言葉を吐き出す。
 ル、ルイさんなりの譲歩というか――山梨くんの謝罪を受け入れた証なんだろうけど、結局九割は無視するワケですね……。
 山梨くんの裡に蟠る疑問と悶々は晴れないワケで――ソレッて訊いた挙げ句に無視されるんだから尚更ショック受けるコトになるんじゃないの?
 まあ、二人の間のコトだからあたしはどうでもいいけれど……。
「えっ、ホントかよ? マジで一割は本気で答えてくれんのかよ、ルイッ!? オレ、質問――ってか、疑問がスゲーたくさんあるんだけど!? 毎日十個くらい訊きたいかも!」
 山梨くんがパッと瞳を輝かせ、嬉しそうにルイさんを見上げる。
 ……『かも!』って、喜んでいいようなシチュエーションなの、山梨くん?
 解んないわ。こんな些細なことでテンション上がるなんて、この人たち一体どんな半同棲生活を営んでいるのかしら?
 ――うん、あたしには無関係なコトなので、どうでもいいですけれど……。
「…………うぜェ」
 ルイさんが目を眇め、唇の片側を引きつらせる。
 それにも拘わらず、浮かれた山梨くんは言葉を続けた。
「早速なんだけど――さっきからフモコとの会話に出てくる《トモ》って誰? ま、まさか、ソレがルイを捨てたっていうハジメテの――――」
「捨てられた記憶なんてただの一度もねーし、ソレが妄想だっつってんだよッ! 幼なじみの女二人――って、しっかり言っただろーがッ!!」
 山梨くんが言い終える前に、ルイさんの眦がつり上がり、唇からは怒気を孕んだ声が飛び出していた。
 本当に懲りないわね、山梨くん……。
「えーっと、山梨さん……智っていうのは、有馬智美さんといいまして――咲耶さんの双子のお姉さんに当たります」
 怒れるルイさんに替わり、六楼さんが丁寧に説明してくれる。
「えっ、フモコが双子ッッッッ!? 姉妹揃って、ルイと一緒の部屋で眠ったり、フロ入ったりしてたのかよっ!?」
「嘘でしょ!? ビッショウ様がもう一人増えるなんて、あたし――激しく嫌なんですけどっ!」
「キャアッッッッ! 『グレキョ』二次創作界の神がもう一人! 正に聖なる夜の奇跡だわ!」
 六楼さんの説明に度肝を抜かれて、あたしたちは一斉にビッショウ様に視線を集中させていた。
 あたしは今夜、一体、何回この人たちに驚かされればいいんだろう……。
「フフフッ、お風呂は幼稚園まで一緒に入ってたかしらね? ちなみに、私と智ちゃんは一卵性だから顔もそっくりよ」
「性格は違うけど、趣味は――似たり寄ったりだよな、咲耶も智も……。おかっねー姉妹だぜッ」
「何だかんだ言いつつ智ちゃんも美形男子には目がないからね。あの子、彫刻学科だから肉体美を追求する目が私よりも厳しくて熱いかもしれないわ。そうね、もし山梨くんの事務所で銅像とか創る機会があったら、智ちゃんに依頼してね。私も便乗してスケッチさせてもらうから。山梨版『ダビデ像』――想像しただけで心が躍るわね。フフフッ」
 ビッショウ様がさも楽しげに妖しい微笑みを浮かべる。
「いや、事務所で銅像――とか、これっぽっちも可能性ないしっ! 何より最初からヌードが前提って有り得ないだろッ! オレ、アイドルだからな!」
 山梨くんが間髪入れずに猛抗議する。
 ルイさんじゃないけれど、本当に恐ろしい姉妹だわ!
 姉妹揃って美大生で、しかも美形男子萌えの腐女子さんだなんて――有馬家の行く末が心配すぎる……。
 どうか、有馬弟だけは真っ直ぐに成長し続けますように!
「今夜、智にもちゃん紹介してやっから楽しみにしてろよ、山梨」
「えっ!? 遠慮しておく! オレ、ルイの影でこっそり地味に太巻き喰ってる!」
「ちょーアイドル様がこっそりとか地味とかムリに決まって――――」
 焦る山梨くんに対してルイさんが嫌味を繰り出した時、
 ガタンッッッ!!
 と、一階フロアの何処かで物が倒されるような大きな音が響いた。



30話で完結できそうです(^▽^;)
 
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2011.02.21 / Top↑
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