ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 宙を舞う有馬美人の後ろ姿を見送り、久我条蓮は唇に弧を描かせた。
 無言で蓮を射た時に見せた真摯で気高い表情を思い返すと微笑ましくてならない。
 月光を浴びて煌めく黒曜石の双眸が美しかった。
 敵対する神族であろうと、欲を満たすためだけに喰い殺すには惜しい素材だ。
「真面目だね……。もう少しオトナになったら血管を斬り割いてみたい気もするけど――今はまだいいや。遙様の方が心配だしね」
 蓮は如月邸の高い塀から視線を外すと踵を返した。
 今宵は、ここを訪れるという一条遙の身を案じて先回りしていたのだ。
 意想外に有馬美人と遭遇してしまったが、無用な争いも無駄な騒ぎも起こしたくはない。美人には彼なりの思惑があるのだろうし、遙にとってマイナス要素にならなければそれでいい。美人には申し訳ないが、如月祐介の意識が美人の侵入によって分散され、遙に危険が迫る確率が低くなるなら尚好都合だ。
「意外と芯は強そうだけど、大丈夫かな? 如月氏の術中に填らないといいね、有馬くん」
 独り言ちると蓮は如月邸の脇に駐めてある愛車へと歩み寄り、運転席へ滑り込んだ。
 直ぐさま、探るような視線が助手席から浴びせられる。
「――今のは?」
 助手席には三条風巳が座している。彼の声音には幾ばくかの不満が織り交ぜられていた。
「天主の従弟らしいね。学校で遭ってないのか?」
「ああ……学園では一度も見かけなかったな。へえ、アレが有馬家の跡取りね。何となく葵に似てるワケだ」
「綺麗な子だろ。ホント惜しいなぁ。アレが女だったら迷わず口説き落とすんだけど」
「迷わず押し倒す――の間違いだろ」
 声を弾ませる蓮に冷たい一瞥を与え、風巳が毒突く。
「欲しいモノはどんな手段を用いても我が物にする――コレ、魔族の本能だからね」
「本能って、便利な言葉だな。――で、始末しなくていいのか?」
「まだ必要ないだろ? 何故だか知らないけど、彼は如月祐介氏を嫌っているみたいだしね。彼が如月氏を消してくれるなら万々歳だ」
「フンッ……俺と蓮がいるのに、あの忌々しい男を殺しに行けないなんて歯痒いな」
 風巳の声にまた不服げな響きが宿る。
 その想いは蓮にもよく解る。条家当主が二人も揃っているのに、憎き相手に手を出せないなんて口惜しすぎる。
「仕方ないさ。遙様の命令は、魔王様の次に絶対だ」
「……遙様も死んでしまうのかな? 龍一と同じように、あっさりと――」
 風巳の唇が不吉な言葉を紡ぐ。
 それに対して蓮は何も応えなかった。
 無言で風巳を見つめると、彼は馬鹿なことを口走ったと後悔したのか、蓮の視線を避けるようにシートを倒し、瞼を閉ざした。
 蓮は風巳から窓へと視線を移し、如月邸をじっと見つめた。
 ――遙様、どうかご無事で……。

 夜空には巨大な満月。
 赤みがかった月影に包まれ、如月邸は静かな不気味さを醸し出していた――


     *


今回は短め更新です。スミマセン(;´Д`A ```

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2011.07.06 / Top↑
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