ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 有馬美人は如月邸離れの入口で一度立ち止まった。
 家屋や庭を含め、如月家全体が奇妙な静寂に包まれている。
 屋敷を警護しているガードマンの気配が微塵も感じられない。当然、離れの玄関にも見張りの者は立っていなかった。
 まるで誰かが来るのを待っているかのようだ……。
 美人は首を巡らせ、周囲を窺った。
 やはり、しんと静まり返っている。
 魔族である久我条蓮が屋敷を観察しているので迂闊に行動を起こせないのかもしれない。もしかしたら如月祐介が留守だということも有り得る。
 静かすぎる点は些か気に懸かるが、離れにすんなりと侵入できることに対しては何ら不満はなかった。
 美人は玄関ドアに手をかけた。軽く取っ手を引いたり押したりしてみるが、ドアが動く様子はない。
 ドア脇の壁には小さなコンソールパネルが埋め込まれている。暗証番号を入力し、指紋照合をクリアしなければドアは開かない仕組みなのだろう……。
「まあ、僕らにとってはセキュリティにもなりませんけど――」
 独り言ち、美人は深呼吸を一つした。
 左手をコンソールパネルにそっと押し当てると、指輪の填められた中指を中心に黄金色の燐光が広がる。
 すると、不思議なことに小さな電子音がコンソールパネルから響き、カチャリとドアが開いた。普段は駆使することもないが、美人には念動力に近い能力が備わっているのである。
 美人はドアの隙間から身を滑り込ませると易々と離れへ侵入した。
 如月家の離れに足を踏み入れるのは初めてだが、難しい造りにはなっていないようだ。パッと見、ごく普通の民家に見える。
 最小限照明は灯っているが、人の気配は感じられない。
 何処かから低いモーター音のようなものが聞こえてくるだけで、屋内はひっそりとしている……。
「誰もいないのかな? ――いや、でも、姉さんたちが目撃してるから誰かは運び込まれてるはずなんだけど……」
 美人は慎重に歩を進め、離れの奥へと向かった。
 一階の最奥には何の変哲もないドアが一つあるだけだ。
 そこで美人は脚を止め、フッと両眼を細めた。
 ドアの向こう側から微かな息遣いが聞こえてきたのだ。
 神経を研ぎ澄ませると、何者かの気配と苦しげな呼吸音をはっきりとキャッチすることが出来た。
 やはり咲耶が見たものは人間だったのだ。
 美人は躊躇わずにドアの取っ手を握った。
 こちらの部屋は施錠すらされていないらしく、ドアは容易くスッと開いた。
 途端、暗闇の中から苦悶の呻きが届けられる。
 しかし、迂闊に明かりを点けるわけにもいかない。
 美人は呼吸を整えて氣を高めると、神力を眼に集中させた。
 直ぐさま、視界が明瞭になり、昼間とほぼ変わらないくらいに視野が拓ける。
 部屋の奥に視線を馳せ、美人は恟然と目を瞠った。
 美しい黄金色の輝きが、部屋の奥に広がっている。
 その中心にいるのは、想像すらしていなかった人物だ。
「一条先生――!?」
 思わず美人は驚き声を発していた。
 奥のベッドに横たわっているのは、一条龍一の変わり果てた姿だったのである。



毎日何故にこんなに暑いのか……(o´д`o)=3  もう少しだけヨシヒトのターンが続きます(汗)

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2011.07.09 / Top↑
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