ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 一方、如月邸に残った一条遙は、如月の部下たちと対峙していた。
「龍一の後は追わせませんよ」
 遙は人型の魔魅の行く手を阻んだ。
 大切な主と再会しようとしている龍一の邪魔は決してさせない。過去世で散々辛酸を舐めさせられてきたのだから、せめて今生では一時でも良いから幸せな記憶を刻んでほしかった。
 遙が冷ややかな眼差しを魔魅に向けると、彼らは何かを畏れるようビクリと身体を震わせ、その場に立ち竦んだ。
 下級の繰魔である彼らにも、遙が強い魔力の持ち主であることが解るのだろう。
「へえ、闘いは嫌いなはずなのに、そんなに殺気立つなんて珍しいな」
 如月が遙を見つめ、意外そうに呟く。
「弟を護るためなら闘うことも厭いません」
 遙は静かに告げ、瞼を閉ざした。
 如月邸の随所で魔物の気配を感じる。如月の魔魅たちが、この部屋へ向かって来ているのだ。
 ざわざわとした魔物の気配が一気に高まり、リビングのドアが勢いよく開く音が響いた瞬間、遙はゆっくりと瞼を押し上げた。
 人型の魔魅が数体、リビングに駆け込んでくる。
 視界の端に黄金の輝きがチラつく。
 遙の髪は瞬時にして元来の長さに戻り、黄金色の光輝を発しているのだ。双眸も冴え冴えとした蒼を取り戻しているはずだ。
「これはこれは……たかが魔魅如きに本来の麗しい姿を披露してくれるなんて、光栄だね。どうせなら翼も出してれないかな?」
 遙を見つめる如月の目に嘲るような色が加わる。
 遙は如月から視線を外さずに、彼の要望通りに純白の翼を出現させた。不思議なことに二つの羽根は衣服を擦り抜けている。
 如月の意に従ったわけでなはい。戦闘に突入するなら、やはり本来の姿の方が魔力をコントロールしやすいだけのことだ。
「これで満足していただけますか?」
「素晴らしいね」
 如月の顔に冷笑が浮かぶ。
 彼が悠然とワイングラスをテーブルに置いた刹那――
「――――!?」
 遙は急激に激しい痛みを感じて、その場にガクッと膝をついた。
 心臓が警鐘を鳴らすように鼓動を速め、全身の血がカッと熱くなる。錐で胸を突かれるような鋭利な痛みに、全身から冷や汗が噴き出す。
 肉体から力が抜け落ちるのを感じながら遙はギュッと眉根を寄せた。
「卑怯――ですね……。毒を……盛ったのですか?」
 遙は痛みに耐えながら如月を見上げた。
 これほど急速に身体が変調来すなんて、明らかにおかしい。考えられるのは、先ほど如月に勧められたワインだ。製薬会社の社長である如月とっては、薬物を入手し、それをワインに仕込むことなど造作もないに違いない。
 だが、ワインに何らかの薬物が混入していたのだとすると、如月は何故平気なのだろう? 自分にだけ異変が起こっているのは腑に落ちなかった……。
「毒なんて入れてない――と言っただろう?」
 如月がソファに座ったまま脚を組み替え、せせら笑う。
「では……何故……?」
「ああ、私が動けるのが納得できないのか? 確かに毒薬は入れてない。ただ、有馬美城の血を混ぜただけだ」
「――ッ……!?」
 事実を知らされ、遙は恟然と目を瞠った。
 アリマヨシキ――榊の血を濃く受け継ぎ、一度に幾柱もの神を降ろすことのできる稀代の巫覡。
 噂では、有馬家の当主はもう十数年以上も行方知れずだと聞く。
 その彼の血を如月がどうやって得たのかは謎だが、彼の血が自分にとっては脅威であることは覆しようのない現実だ。
 神族から魔族へと寝返った一条家の者は、いつの間にか神の血に対して強烈な拒絶反応を示すようになってしまったのだ。軽く吸血するだけなら支障はないが、多量に体内に取り込むと酩酊状態に陥る。それが濃密な神の血ならば、一条にとっては劇薬に等しい。
「美城の血は一条には格別に効くみたいだな。弟で実験済みだったけど、まさかこんなに効果覿面だなんて――いいザマだな」
 如月の顔に刻まれた冷笑が深まる。遙に祖注がれる眼差しには、残酷さと欲望が相俟った危険な光が宿っていた。
「白い翼か……神族の名残だな。気に食わないな。君にもあの忌々しい榊の血が流れているなんて。魔族の君には不要のものだろう。君はさっき私のことを嗜虐を好むと評したけど――全くその通りだよ。目の前で血が流れるのを観ると歓喜と興奮を覚えるね。そこは前世の性癖を忠実に引き継いでるな。君のその真っ白な翼を痛めつけるのは、それはそれは愉しいことだと思うよ」
 饒舌気味に語る如月の顔に喜悦が満ちる。
「……何……を――――」
「翼を引き千切れ」
 遙の疑問を打ち消すように、如月の唇が冷酷な命令を発した。



亀更新続行中です(;´Д`A ```

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2011.09.18 / Top↑
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