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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Sat
2009.06.06[16:43]
     *


「水柯は、あなたの――あなたと聡さんの娘なのよ」
 瞳を涙の膜で潤ませ、蒔柯は驚くべき事実を暴露した。
 地面に座り込んだサラが、蒔柯と水柯に交互に視線を漂わせる。
 直杉と充が顔を見合わせ、樹里が幼なじみを凝視した。
 驚愕が全ての者に降り注いでいた。
 その中でも最も衝撃を受けたのは、当事者である水柯と水妖の二人だった。
「……どういうこと?」
 水柯は泣き笑いの表情で蒔柯を振り返った。
「今まで黙っていて、ごめんなさい。あなたは……流水と聡さんの子供なのよ」
「どう……して……。わたしはパパとママの子供でしょ?」
「ええ、水柯はパパとママの娘よ。でもね、あなたに生命を吹き込んでくれたのは、あそこにいる――流水なの。水柯の『水』は流水の名前から貰ったのよ」
「そん……なっ……」
 ガクリと水柯はその場にへたり込んだ。
 衝撃が大きすぎて頭が働かない。
 全身から力が抜けてゆく。
 暗闇の中で展開された悪夢は、このことを示唆していたのだ。
 あれは夢などではなく、真実だった……。
『――嘘よ』
 水妖の口から愕然とした呟きが洩れる。
 彼女は水の鞭を噴水に引き上げながら、蒔柯に猜疑の眼差しを向けた。
『わたしと先生の赤ちゃんは死んだはずよ。十七年前、わたしは子供を身籠もったまま美術室から飛び降りたんだもの。噴水に直撃して、子供も一緒に死んだはずよ』
「子供も一緒に亡くなったのなら、なぜ流水は今も子供を求めてこの学園を彷徨っているの? どうして、あなたの赤ちゃんは傍にいないの? あの時――子供は助かったのよ」
『嘘だわ。これ以上、わたしを惨めにさせないでよ、蒔柯』
「真実なのよ。――水柯」
 項垂れる水柯に蒔柯が歩み寄り、娘の髪をそっと撫でる。
 水柯は蒔柯のスカートの裾を強く握り締めた。
「ママ、何を聞いてももう驚かないから……わたしに解るように、ちゃんと説明して」
 水柯は必死に涙を堪えていた。
 もう充分にショックを受けた。
 この後、何を聞いても自分は驚かないだろう。
 自分には十七年前の真相を聞く権利がある。
 そして蒔柯には、娘に全てを語る義務があるはずだ。
「解ったわ。そうね、流水。少し昔話でもしましょうか。あなたと、私と、聡さんの――」
 蒔柯は静かに、ゆっくりと語り始めた。




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