ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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《WALTZ》
 あたし――園生沙羅(そのお さら)が住む都内M市のメインストリート沿いにあるお洒落なケーキ屋さん。
 五年前にオープンして以来、未だにお客さんが殺到し続けている超人気店だ。
 外から店内が窺えるガラス張りのお店には、スウィートなスイーツと夢とロマンがたっぷりと詰められている。
 眺めているだけでも心が弾む色取り取りの鮮やかなケーキの群れ。もちろん、ひとたび口に入れれば、それは極上の味わいと甘美な恍惚感を伴う至福の時を与えてくれる。
 それだけでも凄いのに、《WALTZ》の売りは、女性たちを唸らせる絶品ケーキを揃えていることだけじゃない。
 魅力的なスタッフの力がそこに加わるのだ。
 どこか翳りを帯びた瞳が印象的なロン毛の店長。
 乙女と主婦たちの憧憬の視線を集めて止まない、色男揃いの店員さんたち――
 そう、《WALTZ》には男前の店員さんしかいない。
 オーナーである松本伊緒(いお)氏の意向で、どのお店のスタッフも女性はNG。男性でもかなり整った容貌の持ち主でなければ面接を通らない――と、もっぱらの噂だ。
 日本全国に百店舗の支店を持つ高級洋菓子店《WALTZ》
 アルバイトを含め、店員として客前に出られる者は全て伊緒氏の審美眼に適ったイケメンばかりなのである。
 M市にある《WALTZ SHIO店》も例外ではない。
 どうして、M市にあるのに《SHIO店》なのか――?
 それは、伊緒社長の愛娘である志緒お嬢様が市内にある超名門私立聖華学園に幼少の頃からお通いになっているから、という理由であるらしい……。
 詳しい説明は割愛。
 平凡な市立商業高校に通うあたしには、お金持ち学校である聖華もスーパーお嬢な志緒様も遠い存在――いや、全く無縁の存在だ。
 とにかく《WALTZ》には、一目見ただけで心臓がバクバクしそうなほどの色男たちばかりが揃えられている。
 女の子とって、そこは正に楽園。
 甘く美味しいケーキを堪能しながらイケメン店員さんと出逢える素敵な場所でもあるから。


《WALTZ》には、一つの伝説がある。
 一年に一度、二月十日にだけ販売される数量限定の幻のケーキ《ラブ・パラダイス》を食べると、片想い中の人は魔法にかけられたように恋が実る――というものだ。
《ラブ・パラダイス》に関しては、厳しい箝口令が敷かれている。
 売る側の店員は、それがどんなケーキであるのか決して口外してはいけない。
 買う側の客もケーキについての情報は一切流さないことを誓約させられる、という徹底ぶりだ。
 もちろん、現物は厨房に厳重保管されているので見ることは適わない。
 テイクアウトは厳禁。
《ラブ・パラダイス》を食べられる場所は、店舗の奥にある特別個室だけ。
 雑誌やテレビ取材はNG。
 ネット書き込みも禁止。
 ブログに写メを載せるなんて以ての外だ。 っと、写メの心配はいらないんだったわ。《WALTZ》内での携帯電話の使用は堅く禁じられているんだから。
 これは、色男店員の画像を流出させないための方針らしい。オープン当時は、女の子たち(中には男の人もいたそうだけど……)のフラッシュ砲火が物凄くて、仕事にならない状態だったことから設けられたみたい。
 そんな状況を改善し、尚かつスタッフのプライバシーを護るために、《WALTZ》では徹底して携帯電話の使用を禁じている。
 まあ、そんなこんなで――《ラブ・パラダイス》に関する情報は全くない。
 あたしが知っているのは、毎年二月十日のみ限定販売している、ということだけだ。
 当然、あたしはまだ《ラブ・パラダイス》を食べたことがない――



     「2 南海とルイさんと山梨くん」へ続く



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2009.06.07 / Top↑
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