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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Mon
2009.06.08[23:45]
 手早く身なりを整えると、ミロは、若い衛兵と共に地下にある査問室へと向かった。
 レイ城の地下には近衛兵の詰所と、捕らえた罪人を一時的に拘束するための留置室、そして、取り調べを行う査問室が設備されているのだ。
「――ったく、わざわざ俺を指名してくるとは、なんて囚人だ……!」
 地下を颯爽とした足取りで闊歩しながら、ミロは軽く舌打ちした。
 歩く度に、純白のマントが優雅にはためく。
 長い白金髪は後ろで一つに結わえられ、額には瞳と同じ色の玉が輝く銀細工のサークレットを嵌めていた。
 腰に剣を携えた勇ましい姿は、寝起きの時の姿とは程遠く、華麗で鮮やかだ。
「はぁ……申し訳ありません。――あっ、ここです、ミロ様」
 若い衛兵は主人の凛然とした横顔を盗み見ながら、立ち並ぶ扉の一つを指差した。
 立ち止まり、慣れた手付きで解錠し、扉を開ける。
 ミロは、開かれた扉から室内へと滑り込んだ。
 室内には、数人の衛兵と三人の囚われ人の姿があった。
 自分を呼び付けた囚人らの顔を見回して、
「――――!」
 ミロは軽く目を瞠った。
 僅かに遅れて、唇から重々しい溜め息が吐き出される。
 三人の囚人は、入室してきたミロを無言で見つめていた。
 一人は、褐色の肌の小生意気そうな少年。
 もう一人は、背骨が折れ曲がり、顎に見事な白髭をたくわえた皺だらけの老人。
 最後の一人は、殺戮でも行ってきたのか、乾いて赤錆びた血で全身を彩っている少年らしき人物だった。
「バカか、おまえら……」
 妙に乾いた声がミロの唇から滑り落ちる。
 その言葉が、衛兵に向けられたものなのか囚人らに向けられたものかは、判断するのは難しかった。
「オイ――」
 ミロは眉間に深い皺を刻み込む。
 ――頭痛がする。
 額に軽く手を当て、隣の若い衛兵を見遣る。
「はっ。何でしょうか、ミロ様?」
「奴らの枷を外してやれ。それから、没収した物も返してやれ」
「はっ? し、しかし、ミロ様、何も訊かないうちから、そんな――」
 困惑したような衛兵の声は、ミロの鋭い一睨みによって消沈した。
「いいから、言われた通りにしろ」
「で、殿下! 恐れながら、私もそれには同意しかねますが――」
 囚人の周囲を取り囲んでいた衛兵の一人が、勇気を振り絞ってミロの指示に反対を示す。
 刹那、ミロの秀麗な額に青筋が浮かんだ。
「俺は、枷を外せ、と言ったんだっ!」
 有無を問わせない口調で叫び、ミロは額に当てていた手を激しく振った。
「貴様ら、俺の未来の妻とその従者をいつまでもこんな牢にブチ込んでおく気かっ!」
 ミロの怒声に、衛兵たちは一斉に身を竦めた。



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Category * 鬼哭の大地
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