ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 銀の髪が長く尾を引く。
 その残像に思わず見惚れそうになった瞬間、眼前で煌めいた。
 彩雅が雪華を振り下ろす。
 反射的に、綺璃は燈火で彩雅の攻撃を受け止めていた。
 刃と刃が烈しくぶつかり合い、火花を散らす。
 相反する属性の剣同士だからこそ、触れ合った瞬間の反発は凄まじかった。
 二振りの剣から生じた衝撃波が、自然と互いを引き離す。
 数メートル吹き飛ばされたところで、綺璃は後方に宙返りするような形で着地した。視線を前方へ向けると、彩雅もちょうど雪華を支えに後退を食い止めたところだった。
 衝撃波が髪や衣服を嬲り、あっという間に通り過ぎてゆく。
 だが、世界が静穏さを取り戻しても、彩雅が次なる攻撃を仕掛けてくることはなかった。
 二人の距離は遠い。
 彩雅の表情を読むことは出来ないが、綺璃には彼の困惑している顔が容易く想起できた。性根の優しい彩雅は、まだ躊躇いを棄てきれずにいるのだ。
 綺璃も心の奥底では、彩雅と剣戟を繰り広げることを畏れている。
 傷つけ合うことを逡巡している。
 だが、それでは何も解決しないことも熟知していた。
 ――このままでは埒が明かないな。
 綺璃は逡巡を振り切り、燈火を握り直すと地面へ垂直に突き刺した。
 彩雅が思い惑っているのなら、こちらから手を打つしかない。
 ――頼むから、避けてくれよ。
 そう胸中で祈りながら、綺璃は燈火に神力を集中させ始めた。
 全身からゆらゆらと深紅の氣が立ち上る。
 氣の高まりと共に燈火が妖しく輝き、地を貫いた箇所から亀裂が走った。
 物凄い速度で地が裂ける。
 彩雅の目前まで行くと、大地の割れ目から派手に火柱が迸った。
「――くっ……!」
 彩雅が咄嗟に襲い来る炎を雪華で斬り割く。
 雪華の刃が冷光を纏う。
 刹那、ボコボコボコッ! と地中から先端の尖った玻璃の如き氷塊が生えた。
 巨大な氷柱が炎を遮る。
 シュウシュウと音を立てて火炎は消失した。
 彩雅の全身は神氣を放出し、崇高な銀の光に包まれている。
「……本気なのだな、綺璃」
 哀しげな彩雅の呟き。
 彼は蒼い双眸で綺璃を捉えると、やにわに跳躍した。
 一気に二人の間合いが詰まる。
 雪華の切っ先が綺璃に向けて鋭く突き出される。
 綺璃は、その攻撃から身を護ろうとはしなった。
 それどころか逆に手にしていた燈火を手放し、無防備に雪華の剣先を受け入れたのだ。
「――――!?」
 彩雅が綺璃の異変に気がついた時には――全ては遅すぎた。
 剣が肉を抉り、骨を砕く。
 生々しく、そして臓腑を引っ繰り返されるような不快な感触が、彩雅を襲った――



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2009.06.09 / Top↑
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