ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 アダーシャの王宮――リージャナータ宮殿を挟んで、遊郭の反対側には高級住宅街が広がっていた。
 黄昏時の住宅街は森閑としていた。
 街路を行き交う人々の姿も少ない。
 住人たちは皆、貴族や富豪、王宮に遣える官僚たちである。
 政敵や商売敵がズラリと軒を並べているせいか、近所つき合いは皆無に等しく、従って人通りも疎らであった。
 高級住宅街の外れ――小高い丘の中腹部に、さほど古くはない屋敷が一つ建っていた。この屋敷も他の豪邸同様、頑丈そうな門扉は堅く閉ざされている。
 屋敷の主は、自室で優雅に果実酒を嗜んでいた。
 天鵞絨のソファには、鮮やかな緋色のマントが投げ出されている。
 マントの持ち主――魔法剣士シンシリアは、酒の入った杯にに口をつけながら、寝台の端に腰を下ろした。
 寝台の中には、豪奢な金髪の少年が眠っていた。遊郭で働かせれば、あっという間に大金を稼いでくるだろう、端整な顔立ちの少年だ。
 一時間ほど前に遊郭で拾ってきた――いや、強引にさらってきた少年。
 人質として拉致してきた少年の寝顔を、シンシリアはじっと眺めていた。マントは脱いでいるが、腰にはしっかりと剣を携えた状態で少年が目覚めるのを待っている。
 あまりに無防備で美しい寝顔なので、長時間眺めていると手を出してしまいたい衝動に駆られる。
 華奢で繊細な少年が綺麗な顔を歪め、恐怖に瞳を見開き、許しを請いながら無理矢理自分を受け入れさせられている姿を想像すると、シンシリアの胸は高鳴った。嗜虐心と共に欲望が胸の奥から鎌首を擡げてくる。
 だが、シンシリアは邪な欲求を封じ込め、勢いよく果実酒を煽った。
 片手を少年の鼻に伸ばし、指先でその形の良い鼻面を摘む。
「――んっ……」
 少年の眉間に皺が寄る。
 息苦しさのせいか、少年は何度か身じろぎを繰り返した。
 瞼が微細に振動している。
 シンシリアは鼻先から指を離し、少年の白皙の頬を二、三度軽くぶった。
 少年の瞼が痛みと衝撃にパッと跳ね上がる。
 深い海の色を思わせる蒼い双眸が、シンシリアを捉えた。



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2009.06.13 / Top↑
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