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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Thu
2009.06.11[00:08]
      *
 

 レイ城『謁見の間』では、密やかにレギオン国王と王子たち――そして、キールの王女アーナスとの会見が行われていた。
「よく参られた、アーナス殿」
 一段高みにある玉座に腰を据えた壮年の男が、親しげにアーナスに向かって声をかけた。
 イタール国王レギオンである。
 彼の隣の玉座は、空のままだ。
 正妃リゾネット・マリィが五年前に流行病で他界してから、王妃の玉座に座る者はいない……。
「お久しぶりでございます、レギオン陛下」
 アーナスは王の前で優雅に跪き、礼を施す。
 湯あみをし、身なりをきちんと整えたものの、アーナスは相変わらずの男装だった。
 流石に国王陛下の手前、神剣ローラは入室前に護衛に預けているが……。
「此度は、ロレーヌ始まって以来の火急の事態。堅苦しい挨拶は抜きにしよう、アーナス殿。我がイタールは、盟友キールを救う為の援助を惜しみはしない。すぐに軍議に入ろうではないか」
 レギオンが、手振りでアーナスに立つように促す。
「有り難きお言葉にございます。陛下のご好意、このギルバード・アーナス・エルロラ――キール国王ギル・ハーンに代わり、心より感謝致します」
「ふむ……相変わらず生真面目だな、アーナス殿は。そなたは、余の息子ミロの妻も同然――いわば、既に家族のようなものなのだよ。もっと楽にな」
 レギオンが苦笑混じりにアーナスに視線を注ぐ。
「……はい」
 アーナスは深々と一礼し、立ち上がった。
 レギオンの言いたいことも解らないでもないが、こちらは国の代表として、頭を下げて援軍を請いにきたのだ。
 とても『楽に』とはできない心境だった。
「アーナス」
 背後でミロがアーナスを呼んだ。
 アーナスは振り返り、軽く頷く。
 室内には円卓が設えられ、そこに数人のイタール王族が身を落ち着けていた。
 手招きするミロの横に、アーナスは素直に腰かける。
「あまり父上に気を遣っているとハゲるぞ、アーナス」
 耳元で、ミロが軽口を叩く。
「無用の心配だ」
 アーナスは横目で軽くミロを睨めつけ、レギオンに視線を戻した。



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