ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「……う……ん……?」
 妙に身体が怠い。
 綺璃は意識の覚醒とともにうっすらと目を開いた。
 白い天上が霞んだ視野に広がる。
 近くには、彩雅の姿も雪の姿もなかった。
 ただ見知らぬ部屋の天井だけが瞳に映っている。
 ――夢だったのか?
 生きていることが不思議だった。
 何もかもが夢の中の出来事のように思えてならない。
 綺璃は、無意識に彩雅の雪華で貫かれた胸に手を這わせた。
 ズキンッ――と強い痛みが走る。
 確かな疼きが意識を明瞭にした。
 夢ではない。全ては現実だ。
 指で軽く撫でた胸にはきつく包帯が巻かれている。誰かが手当てしてくれたらしい……。
 ――誰が俺を助けた?
 綺璃は数度瞬きを繰り返した。徐々に視界も鮮明なものへと変化する。
 真っ白な天上を眺めているうちに、ようやく己が寝台に仰臥していることを実感した。
 普段は女性が使用しているのだろう。女性特有の甘い香りが鼻腔を掠める。
 綺璃は、胸の痛みを堪えて上半身を起こすと、無造作に片手で掻き上げた。
 大きく息を吐き出し、周囲に首を巡らせる。
 ふと、綺璃は視線を一枚の絵画の上で止めた。
 左半分は白い布で覆われているが、露わになっている右側には一人の少女が描かれていた。
 薄紫の髪に紅玉のような瞳がよく映えている。
 際立つ美貌に浮かぶ笑みは輝いている――屈託のない純粋な微笑みだ。
 ――今では、到底考えられない表情だな……。
 綺璃は、肖像画に視点を据えたまま溜息を零した。
 絵の中の少女――それは夢世界で綺璃を助けた人物と同じ顔をしていた。
 風天・翔舞(しょうぶ)だ。
 カチャリ。
 不意に扉が開く。
「――お目覚めか?」
 流れるような所作で室内に入ってきたのは、翔舞その人であった。



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2009.06.11 / Top↑
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