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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Thu
2009.06.11[22:40]
「そうして二人並んでいると、太陽と月だな」
 不意に、露台に第三者の声が割り込んできた。
 アーナスとローズ・マリィは驚き、同時に背後を振り返る。
 ミロが、長い白金髪を掻き上げながら、傍へ歩み寄ってくるところだった。
 彼より数歩遅れてルークが従っている。
「ミロ兄様、いつの間に入ってきたの?」
 ローズ・マリィがアーナスから離れて、嬉しげに兄の腕に絡みつく。
「何度か呼びかけたんだが、返事がないので勝手に入ってきた」
 ミロは事もなげに告げ、妹の頬に軽くキスする。
「飽きもせずにルークと剣の稽古か?」
 アーナスはミロとルークを見比べて、揶揄するような言葉を投げた。
「他にすることがなくてね」
 ミロが意地悪に告げて、唇だけで微笑む。
「本当にすることがなくて、こっちとしては肩身が狭い。身体も鈍ってくるし」
 ミロの嫌味に気づかない振りをして、アーナスは話題を変えた。
「もう一ヵ月だぞ? そろそろ結果が出ても良いと思わないか、ミロ」
「ローレン兄上のことか?」
 ミロが切り出された話題に顔を厳しく引き締める。
 アーナスが頷くと、
「それなら見解は同じだ」
 ミロは即座に同意を示した。
「父上は俺やアーナスには内密にしてるみたいだけどな。戦況はキール・イタール側が危ういと考えるな、俺は。隠しているのが、余計に怪しい」
「珍しく意見が合うな、ミロ」
 アーナスは、興味心たっぷりの眼差しをミロへと注いだ。
「こっちも、そろそろ忍耐の限界なんでね。――カシミアに押されているならいるで、俺が軍を率いて援護に行く。アーナスの祖国をみすみす滅ぼさせたりはしないさ」
 ミロの翡翠色の双眸が真摯な光を湛えて、アーナスを見返す。
 彼は妹の腕から自分の腕を引き抜くと、それを悠然とアーナスの前に差し出すのだ。
「――で、今から、その旨を父上に直訴に行くんだけど、ご一緒しますか、姫君?」
「今日は恐ろしいほど意見が合う」
 アーナスは不敵に微笑み、差し出されたミロの手を軽く叩いた。
 彼の腕は取らずに、露台から室内へ颯爽と歩を進める。
「何せ、相思相愛だからね」
 ミロは冗談めかして言い、アーナスの後に続いた。
「ミロ兄様! マリィも行くわ!」
「子供は子供同士、仲良くしてろ」
 今にも追いかけてきそうなローズ・マリィを手の一振りで制して、ミロはアーナスの隣に並んだ。
 妹の『子供じゃなのに!』という非難の言葉が聞こえたが、敢えて無視する。
「――違うな」
 扉の把手に手を伸ばしたアーナスが、急にミロを見上げた。
「――――?」
 ミロは不思議そうに小首を傾げる。
 何が『違う』のか解せなかったのだ。
 アーナスの生真面目な顔が、しげしげとミロを見つめている。
 やがて、彼女はゆっくりと唇を開いた。
「ミロとこんなに意思の疎通があるのは――嵐か天変地異の前触れだ」
 冷ややかな刃をミロの胸に突き刺し、アーナスは扉を開けて軽やかに廊下に滑り出た。
「地上最大の意地っ張りだな、あいつは」
 ミロは苦笑混じりにぼやくと、光り輝く黄金の後ろ姿を追った。


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Category * 鬼哭の大地
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