ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 紫姫魅天居城――紫毘城


 翔舞は、畏れもなく単身で紫姫魅の根城に足を踏み入れた。
 迷いはない。
 ここへ来ることは、紫姫魅が乱を起こした時から定められていたのだ。
 翔舞は毅然と前を見据え、城内を奥へと向かって進み続けた。不思議なことに彼女は物音一つも立てない。風そのもののような動作で歩いていた。
 紫姫魅側の手の者が一人も出て来ないのは、紫姫魅が何か策を弄しているからだろう。
 そうと察してはいても、前へ進むより他はなかった。
 紫姫魅が自ら飛び込んで来た七天をみすみす逃すはずはない――重々承知だ。
 あの冷美な男は、城の何処かで翔舞の様子を窺っているに違いない。
 翔舞が向かっているのは、綺璃の妻――鞍馬天が捕らえられていると思しき場所だ。
 時折、城の中では有り得るはずのない風が吹く。その風が、鞍馬の居場所を教えてくれるのだ。
 風がまた鞍馬の薫りを運んでくる。
 それは意想外に強く――彼女がすぐ間近いることを示していた。



「――翔舞様!?」
 角を折れた途端、ばったり鞍馬と出会した。
「鞍馬天? 何故、こんな処へ!?」
 翔舞はあまりに突然の出来事に眉を跳ね上げた。
 ――近すぎる。
 確かに風は鞍馬の薫りを運んではきたが、まさかこれほどの至近距離にいるとは推測していなかったのだ。
 偶然にしては出来すぎている。
 ――おかしい。
 翔舞は双眼に鋭利な輝きを閃かせた。
 紫姫魅に囚われているのならば、牢に監禁されているはずだ。
「牢の鍵が外れていたから、逃げ出して来ましたの」
 何の懸念を抱いていない様子で鞍馬が応える。
 それでは『どうぞ逃げて下さい』と言っているようなものだ。
 翔舞は鞍馬の言葉を聞いて、スッと表情を引き締めた。
「――罠だっ!」
 咄嗟に鞍馬を自分の方へと引き寄せる。
 だが、それより一瞬だけ早く、二人の立っていた床が見事に抜けたのである。

 瞬く間に巨大な穴が二人を呑み込む。
 翔舞と鞍馬は、漆黒の闇へと堕ちていった……。



     「三の章」へ続く



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2009.06.13 / Top↑
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