ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「レギオン陛下」
 アーナスは自分を支えてくれるミロの腕をそっと振り解き、厳格な語調で言葉を放った。
「そう簡単に『滅亡』などと言わないでいただきたい。何故、我がキールが滅亡なのですか? 我が兄上アイラは、生存しているかもしれません。それに……それにキールには、私がいます。王家を継ぐ者は、残されています。二度と私の前で、軽々しく『滅亡』などという暴言を吐かないでいただきたい!」
 何人をも平伏させるような威厳ある叫びに、一同の視線がアーナスに集中した。
「――アーナス?」
 微かな戸惑いと驚愕を孕んだミロの視線が、アーナスに注がれる。
 アーナスはその視線を平然と受け止め、『大丈夫だ』というように軽く片手を挙げた。
「この度のことは、陛下にも我がキールにも大変遺憾なことと存じます。――ですが、これだけはしかと心に留めておいていただきたい。このような惨々たる結果を招いたのは、明らかに陛下の判断違いである、ということを! 陛下の決断が惨事を生んだのです!」
 アーナスの手厳しい糾弾に、場は息を呑んだようにひっそりと静まり返った。
 レギオンすら反論する余地もないまま押し黙っている。
「明敏な陛下なら私の言葉、ご理解いただけると思います。――金輪際、私に隠し事などなさいませんように」
 他者の物言いたげな様子を歯牙にもかけず、アーナスは憤然と言い切った。
 それから、逡巡するようにふと表情を翳らせる。
 だが、その憂う表情は一瞬で消え去った。
「以前、陛下が私に告げた申し入れ――」
 強引に感情を理性で押し殺したような声音で、アーナスは言葉を続けた。
「引き受けさせていただきます」
 覇気の漲る眼差しでレギオンを射抜く。
「――アーナス殿?」
 レギオンが意外そうに問い掛けてくる。
「この私の身体と『エルロラ』の名、そして神剣ローラ――陛下に……いえ、ロレーヌのために捧げましょう」
 アーナスは迷いのない瞳で一同を見回した。
 皆が皆、驚きの表情でアーナスに注目している。
「カシミアとラパスを斃す、その日まで――私は、喜んで『神輿』に祭り上げられましょう。あなた方の望む『ギルバード・アーナス・エルロラ』に――」
 一言一言を吟味するように歯切れ良く、ゆっくりとアーナスは宣言した。


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2009.06.14 / Top↑
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