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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Sun
2009.06.14[20:19]
「直情径行の男だな……」
 アーナスは瞼を跳ね上げ、自分の上に転がってきたミロを物珍しげに眺めた。
「こんなご時世なのに、非常識だと思わないのか?」
「こんなご時世だからさ」
 ミロが素早く切り返してくる。
「私は……構わない」
 アーナスはミロの流れる白金髪を指で掬いながら、彼をしっかりと見つめた。
「俺も、全っ然構わん」
 ミロの顔に微笑が刻まれる。
「俺と正式に結婚すれば、キールの残兵だけではなく、イタールの兵もおまえに今よりも確かな忠誠を誓うだろう。そうすれば、軍の指揮がしやすくなる」
 スッと、ミロの表情から微笑みが消失した。
 怜悧で冷徹な王子の顔が、アーナスを見下ろしている。
「……ミロ?」
「――利用しろ、アーナス。自分の利益になると判断したら、迷わずにそうしろ。使えるものは、全て使え。そして、それが障害になるようならば、躊躇わずに切り捨てろ。無論、俺も含めてな」
「ミロッ!」
 アーナスは厳しい顔付きでミロを睨めつけた。
「カシミアを――ラパスを斃すためだ。おまえが剣の道を突き進むためには、それくらいの覚悟が必要なんだよ。俺は……おまえの妨げになるのなら、切り捨てられた方がマシだ」
 ミロの手が愛しげにアーナスの頬を撫でる。
 一刹那、彼の双眸に浮かんだ哀しげな光が、胸に痛かった……。
「違う、ミロッ! 私は――私は、イタール兵の忠誠を得るためや、おまえの地位を利用するために結婚するんじゃない!」
 アーナスは即座に否定した。
 ミロの言うことには一理ある。
 だが、それとこれとは全くの別次元だ。
 自分は打算などではなく、心のあるがままにミロと一緒になりたいのだから。
「……悪かった。俺が意地悪だった」
 ミロの唇が瞼に触れる。
「お願いだ、ミロ……。私に、おまえを捨てろ、などど酷なことは言わないでくれ――」
 アーナスはミロの頬へ手を伸ばす。
「ラパスを斃し、キールを取り戻した時、私の隣には必ずミロがいる。それ以外の未来など要らない……。『全てを晒け出していい』と言ったのは、他ならぬおまえだ。おまえは、私の全てを受け止めてくれるのだろう? ……おまえが傍にいなければ、私は己れを見失ってしまうかもしれない。だから、ずっと私の傍に――」
「ああ、ずっと傍にいる。これからは、絶対に離しはしない」
 ミロの手がアーナスの指を搦め取った。
 触れ合う指先が、熱い。
「愛してる」
 耳元で囁かれる熱っぽい愛の言葉。
「共に歩もう――」
 ミロの唇がアーナスの唇に重ねられる。
 アーナスは静かに瞼を閉ざした。
 心も身体も灼けるように熱い。
 搦めた指を一生離したくなかった。
 ――共に歩もう。
 ミロの言葉が胸を締めつける。
 切なくて、苦しい――だが、とてつもなく愛しい。
 離れたくない。
 ――生きてゆこう、ずっと二人で……。
 アーナスは揺るぎない決意を胸に秘め、繋いだ手に力を込めた。
 何もかも全て消え去り、時が止まればいい――


     *



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