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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Mon
2009.06.15[21:14]

 蘭麗の黄金色の双眸に導かれるようにして、悧魄は振り返った。
「――――!?」
 己の背後に見知った人物を認めて、嫌悪に表情を曇らせる。
「――白王っ!」
 険しい視線を相手に送りつける。
「殺す必要などないだろうっ!?」
 自然と怒声が口をついて出た。
「だから、おまえは甘いというのよ」
 白王(はくおう)――そう呼ばれたのは、艶麗な中に残忍さを漂わせる美女だ。腰まである癖のない白髪と薄い灰青の双眸が特徴的だ。
 白王は明らかな嘲笑を悧魄へ向けていた。
 同様に悧魄も彼女に蔑視を注いでいた。
 共に紫姫魅天に遣える身だが、悧魄は白王があまり得意ではない。彼女の冷酷無比な性格が反感を抱かせるのだ。
「余計なことを……!」
 忌々しげに吐き捨て、悧魄は白王の存在を無視するように蘭麗へと向き直った。
 蘭麗の虚ろな瞳が悧魄を朧に映し出している。
 彼女は何かを伝えたそうに悧魄を見つめていたが、最早自由に言葉を操ることすら無理な様子だ。
 ドクッ、ドクッ……と、剣で貫かれた胸から鮮血が泉のように湧き出している。
 急速に蘭麗の眼精が白濁を帯びる。
 スーッと瞼が落ちた。
「……迦羅……紗――」
 最期にただ一言そう呟き、蘭麗は静かに息絶えた。
 力を失った彼女の手からフワリと純白の光が放たれ、宙を舞う。
 真っ白な羽根――愛する男の分身。
 蘭麗はずっとそれを肌身離さず持っていたのだ……。
 ――リーン、リーン……。
 足首に填められた金輪同士が接触し、哀しげな音色を響かせる。
「地天殿……」
 悧魄は、唇を噛み締めながら蘭麗の脇に膝を着いた。
 敬意を込めて、彼女の唇に付着した血を指で丁寧に拭う。
 それを終えると悧魄は立ち上がり、再び白王と対峙した。
 鋭い眼光で彼女を睨めつける。肝心なことを聞く前に蘭麗の生命を強奪され、彼はひどく不機嫌だった。
「相も変わらず残酷だな、白王。死に逝く者に、敢えてとどめを刺す必要はないだろう」
「フンッ。あたしの勝手でしょう。紫姫魅様の邪魔をする奴は、みんな――この白王様が殺してやるわ」
 白王は悧魄を鼻であしらい、冷ややかに微笑む。
「さてと――次は雷天の生命でも頂戴しようかしらね」
 嬉しげに声を弾ませ、白王は残忍に唇をつり上げた。
 同時に、彼女の身体を眩い閃光が包み込む。
 輝きが失せた瞬間、白王は全くの別人に変貌を遂げていた。彼女は変わり身の特殊能力を有しているのだ。
 白王は、変身の出来映えを確認するように碧い髪を指で掬った。
 碧い髪に碧い瞳の清廉たる佳人。
 それは、雷天・瑠櫻の先の妻――久摩利天に相違なかった。



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