ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
「相変わらず……怖いな、アリシュア殿は」
 黙ってアリシュアの戦いぶりを傍観していたアーナスは、称賛とも恐惶ともとれる言葉を発した。
「その言葉、謹んでお返し致しますわ、アーナス様。――さあ、邪魔者は消えましたわよ」
 アリシュアは微かに笑った後、真摯な眼差しで前方を睨みつけた。
 アーナスも頷き、視線を前に据える。
 逃げ惑う黒騎士たちの間――すぐ間近に、カシミア王旗が悠々と翻っている。
「――ラパス」
 低く呟き、アーナスは馬の腹を蹴った。
 白い愛馬は従順に大地を駆け始める。
「ラパースッ! ラパスは、何処だっ!?」
 身に降りかかった炎をどうにかしようと地でのたうちまわる黒騎士らを飛び越え、アーナスは駆けた。
「ラパスッ! 私と一騎打ちしろ!」
 王旗のすぐ傍まで来て馬を止め、声高らかに叫ぶ。
「――無礼者っ!」
 アーナスの呼びかけに、一人の若い騎士が憤怒した様子で前に進み出てきた。
「我が王は貴様など相手にはしない! 俺が陛下に替わって貴様の首を獲ってやる!」
 騎士がアーナスに憎悪の眼差しを向けたまま、鞘から剣を抜き払おうとする。
「よい、ルシティナ。余が出る」
 低いがよく通る声が制止をかけたのは、騎士が剣を抜く直前だった。
 群がる騎士たちを押し退けるようにして、一人の男がアーナスの前に姿を現わす。
 漆黒の馬に跨った暗黒の騎士。
 夜の闇よりも濃い双眸が、一心にアーナスだけを見つめていた。
「余が、おまえの捜している男だ」
「……ラパス――!」
 アーナスはきつく奥歯を噛み締めた。
 視線は眼前の男に釘付けにされて離れない。
 黒い髪と瞳の青年――カシミア王ラパス。
 初めて相まみれる宿敵は、端麗だが酷薄そうな面差しをしていた。
「望み通り、相手をしてやろう」
 ひどく静穏に黒王ラパスは告げた。
「しかし、陛下――」
「ルシティナ」
 抗議する親衛隊長ルシティナを横目で制して、ラパスはアーナスに向き直った。
「余の花嫁になるかもしれなかった姫だ。……噂にたがわず美しい」
「黙れっ!」
 アーナスはラパスの言葉を遮るように、激しく彼を睨めつけた。
「余も……」
 ラパスがゆっくりと剣の鞘に手をかける。
「一度、逢ってみたかった」
 ラパスの薄い唇が弧を描き、冷笑を刻み込む。
 シャリンッ!
 小気味よい金属音を立てて、ラパスの剣が抜き払われた。
 アーナスは無言でローラを握り直した。
 胸の奥底から怒りと憎しみ、そして例えようのない興奮がせり上がってくる。
 目の前に、求め望んだ打ち倒すべき悪魔の化身が、確かに存在していた――



← NEXT
→ BACK
 にほんブログ村 小説ブログへ 
スポンサーサイト
2009.06.16 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。