ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「その通り。余はシリアから、この魔剣『ザハーク』を授かった」
 ラパスがアーナスの反応を楽しむように、クックッと愉悦の笑みを零す。
「――――!」
 アーナスは胸に鋭い衝撃を受けた。
 ラパスが魔剣を手にしている事実にではない。
 もっと、別の……。
「……そうか。それでか」
 アーナスは自嘲に歪んだ微笑みを浮かべ、手にするローラを見つめた。
「地上には、エルロラが忌み嫌うシリアの加護を受けたおまえがいる。それに対抗する人間が必要だったのだな、エルロラには。だから……おまえに敵対する人間を育成するために、私にローラを与えたのだな――」
 ローラを持つアーナスの両手が微かに震えた。
 ローラの刀身から青い冷光が薄れてゆく。
 エルロラは、未来を見通し、アーナスにローラを授けたのだ。

 邪神シリアとは、闇の女神のこと。
 シリアは、エルロラの妹であり、元来は光の女神だった。
 だが、ある時、エルロラの不興と激怒をかい、女神は天上界を追放され、闇の世界の住人に転落してしまったのだ。
 彼女は光の霊力を失ったが、代償として闇の力を得た。
 邪悪と暗黒を司る女神シリア――彼女は、エルロラにとって赦しがたき天敵だと神話に伝えられている……。

 この世に生を享けた瞬間から、自分の未来は定められていたのだ。
 ローラを操ることのできる最高級の剣士に育ち、やがてラパスと対峙することも……。
 エルロラは何もかも見越していたのだ。
 ただ、憎き妹の地上での手駒――ラパスを斃すためだけに、自分を選んだのだ……!
 思い知らされる現実に、アーナスは愕然とした。
 同時に、知ることはひどく腹立たしくもあった。
 ――神と神の戦いの地上の代理者として、私は選ばれた……。
「だが――」
 アーナスはローラを強く握り直した。
 碧い双眼に生気が漲る。
「私は、エルロラの操り人形ではないっ!」
 ボウッッ!
 再びローラに青い閃光が生じる。
「それは同感だ。余もシリアの傀儡ではない」
 ラパスが薄笑みを浮かべたまま応じた。
「余は、余の意志で、このロレーヌを――いや、大陸全土を制覇する! この魔剣をもってしてなっ!」
「貴様ぁぁっっっ!!」
 ラパスの宣言を聞き終えた瞬間、アーナスは跳躍していた。
「ロレーヌを好きなようにはさせんっ!」
 ラパスの心臓を狙い、鋭くローラを突き出す。
「貴様は私が斃すっ!」
「余は大陸全土の王となるのだ。余を阻むものは、誰であろうと容赦せぬ!」
 ラパスがザハークでローラを下からむ上へと弾き返してくる。
「そう……誰であろうと、な」
 意味深に微笑み、ラパスは剣の構えを解くのだ。
「何のつもりだ?」
 厳しい口調でラパスを詰問する。
 剣を持つ手を脱力したように垂らし、余裕の笑みを浮かべるラパス。
 その真意が解せない。
 不気味なものを見る目つきで、アーナスはラパスを眺めた。
「ギルバード・アーナス・エルロラ。余とおまえの出逢いの記念だ――」
 低く告げ、ラパスが懐から何かを取り出す。
 目の前に突き出されたラパスの手には、何かが握られていた。
 陽光を受けて煌めく、銀の物体。
 所々赤銅色に染まっているのは、乾いた血だろうか?
「――――!?」
 それを目にした瞬間、アーナスは息を呑み、戦慄に目を見開いた。
 ……解ってしまったのだ。
 ラパスが手にしているものの意味を、アーナスには不思議と理解できてしまったのだ。
 立ち竦むアーナスの眼前で、ラパスが唇に弧を描き、嫌な笑みを生み出す。
「おまえによく似た人物からの――贈り物だ」
 ラパスの指が、ひどくゆっくりと掴んだものを手放す。
 吹き荒ぶ風に乗り、光の塊――眩い銀の髪がフワリと宙を舞った。



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2009.06.16 / Top↑
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