ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 カシミア軍に勝利したキール・イタール同盟軍は、野営地に戻り、休息をとっていた。
「アーナス! アーナス!」
 長い白金髪を靡かせながら、イタール第三王子ミロは陣内を大股に歩いていた。
 様々な天幕が立ち並ぶ、その隙間を縫うようにしてミロは闊歩する。
 すぐに、目的地である純白の豪奢な天幕に辿り着いた。
 アーナスの天幕だ。
「――ミロ様」
 天幕の入口に立つ、ほっそりとした女性が振り返り、ミロを認めて呼びかけてくる。
 銀灰の髪が美しい、義姉――アリシュアだった。
「義姉上!」
 ミロは駆け足で彼女へ近寄った。
「アーナスの具合が悪いと聞きましたが!?」
 緊迫した面持ちで、質問を繰り出す。
 野営地に帰還するなり、『アーナス体調不良』の報せが耳に飛び込んできた。
 いてもたってもいられなくなり、彼は休憩もとらずに駆けつけてきたのだった。
「ええ……今、アガシャ様が診ていますわ」
 アリシュアが不安そうに天幕の入口を見つめる。
「そうか、アガシャ殿が――」
 ミロは入口に垂れる布へ俊敏に手を伸ばした。
 彼が布を左右へ押し分けるより早く、
「おお、ミロ様……!」
 内側から入口が開き、アガシャが姿を現わしたのだ。
「アガシャ殿! アーナスの容態はっ!?」
 ミロはアガシャの小さな肩に両手をかけ、必死の形相で訊ねる。
「落ち着きなされ、ミロ様。姫様はただの過労じゃ」
 アガシャが宥めるように報告する。
 瞬間、ミロの全身から安堵するように力が抜けた。
「か、過労……? そっか、あいつ、無茶しすぎるからなぁ」
 大きく息を吐き出すと同時に、ホッと胸を撫で下ろす。
「でも、アガシャ様。あんなにお顔が真っ青でしたわ。とても、ただの過労には……」
 安心するミロを気遣ってか、アリシュアが控え目に反論する。
「……い、いや……それには、別の訳が……」
 彼女の言葉に、アガシャは僅かに動揺したようだった。
 困惑顔で、ミロとアリシュアを交互に見比べている。
「何か、アーナスは隠された病を負っているのかっ!?」
 ミロは直ぐ様表情を厳しくして、アガシャに詰め寄った。
 最愛のアーナスの身に、何事かよからぬことが起こっているのかもしれない。
 一瞬のうちに、頭の中で最悪の妄想が蠢き出し、彼は気が気ではなかった。
「い、いえ……決して、そのようなことではなく……」
 アガシャが言い難そうに口籠り、ミロを見上げる。
「では、何なのだ、アガシャ殿っ!?」
 ミロは切羽詰まった声を張り上げた。
 ミロに怒鳴られ、アガシャは意を決したようだった。
「まあ……いずれは発覚すること。ミロ様もアリシュア様も、中にお入り下され」
 神妙な顔で告げ、アガシャはミロとアリシュアを天幕の内側へと誘った。



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2009.06.17 / Top↑
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