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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
Wed
2009.06.17[20:35]
「……愛してる、アーナス」
 唇が離れた瞬間、ミロが真摯な表情で告げる。
「俺の全身全霊を懸けて――天よりも、星よりも」
「……相変わらず、歯の浮く台詞が好きな奴だな」
 アーナスは呆れたように呟く。
 だが、その美貌は幸せそうに輝いていた。
「おまえのためだけだ」
 ミロが得意満面にニッと笑う。
「――触ってもいいか?」
 次に彼は、アーナスの腹部に視線を当て、待ち遠しそうに訊ねた。
「ああ」
「ここに、俺とアーナスの子がいるんだな」
 アーナスの了承を得て、ミロが壊れものに触れるようにそっとアーナスのお腹に手を添える。
「――見た目は然程でもないが、触ると案外膨れてるな」
 ミロが気難しい顔つきでアーナスを見遣る。
「ああ……アガシャが言うには既に五ヵ月を越え、六ヵ月に近いというからな」
「何っ! 六ヵ月だとっ!?」
 ミロの顔が一瞬にして厳しく引き締まる。
「何で、もっと早くに言わなかったんだ、アーナス! とっくに気づいてただろっ?」
「い、いや、腹も目立たないし、妊娠悪阻も全然酷くなかったし……。誰も勘づいていないようだったから……」
「このっ、馬鹿! 知っていたら、誰が身重のおまえを戦場なんかに駆り出すものかっ!」
 ミロは容赦なく叱責してくる。
 思わず、アーナスは肩を聳やかした。
「……おまえの父親は、ひどく怒りっぽいな」
 ミロを揶揄するように己の腹部をさする。
「フンッ……。戦場で万が一のことがあったら、どうする気だったんだ? 俺は、おまえも腹の子も失いたくないんだぞ」
 ミロが怒鳴り立てたことを反省するように、語気を弱める。
「それは……悪かった。だが、私が戦場に立つのと立たないのでは、兵士の士気が格段に違うというのは、ミロも解ってるだろう?」
「……解った。このことで言い争うのは、もうやめよう」
 アーナスに諭すように言われて、ミロは溜息とともに片手を挙げた。
「過ぎたことは、どうしようもないからな」
 素っ気なく告げて、ミロはフイッとアーナスから顔を背ける。
「――拗ねてるのか、ミロ?」
 アーナスは微笑を湛え、ミロの横顔を見つめた。
「別に、そんなんじゃない」
「やっぱり、拗ねてるな」
 忍び笑いを洩らし、こめかみの辺りを引きつらせるミロの頬に口づける。
「アーナスッ! ――くそっ!」
 ミロはアーナスに見透かされたことに羞恥と怒りを感じたらしく、軽く地面を蹴りつけた。
 それから乱暴に剣を地面に投げつけ、ブーツを脱ぎ捨ててアーナスの寝具に潜り込むのだ。
「決めた! 今日は、このままここで休む」
 一方的に宣言して、アーナスを抱き締める。
「好きにしろ」
「好きにする」
 簡素に告げて、ミロはアーナスに口づける。
 アーナスを抱き締める腕は、限り無く優しく、愛しげだった。



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