ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 三年間の苦労が報われる瞬間がやってくる。
 この三年間、地を這いずり、水中で藻掻き、宙を彷徨い、炎の中を潜り抜けてきた。
 辛酸で凄惨な日々だった。
 だが、ついに厳しい訓練の全てに終止符を打つ刻がやってきたのだ。
 ミシェル・ギルフォートは、込み上げてくる嬉しさを隠し、真摯な面持ちで正面に座する学院長を見つめた。
「ミシェル・ギルフォート君」
 学院長の鋭い眼差しがミシェルを射る。
「ハイ!」
 ミシェルはブーツの踵を打ち鳴らして足を揃え、姿勢を正すと敬礼した。
「まずは、卒業おめでとう。三年間で我が学院を卒業するとは、女性としては中々の快挙だよ。しかも、今年度の主席卒業だ。よく頑張ったね」
 学院長の労いの言葉に対して、ミシェルはニッコリと微笑んでみせた。
『女性としては』という箇所に多少の引っかかりと偏見を感じたが、この際、それは些細な語弊として受け流すことにしよう。
 学院長の言う通り、通常五年間の訓練プログラムが組まれている補佐官養成学院を三年で卒業するということは快挙なのだから。
「君は非常に優秀だ。それでだな、卒業と同時に早速赴任先が決まったというわけだ」
「赴任先……? わたしのマスター、もう決まってるんですか?」
 軽い驚きとともに学院長を見返す。今日は卒業証書の授与だけが成されると思っていた。だが、赴任先――自分の遣える主人まで既に決定されていたらしい。
 卒業と同時に仕事が斡旋されるというのも珍しいことだ。
 普通なら、一ヶ月から半年間はマスター捜しに費やされるはずなのだが……。
「君は主席卒業だから特別だよ。軍は常に優秀な人材を欲しているんだ」
 学院長が誇らしげに微笑む。彼は机上に置かれたコンピュータのコンソールパネルを軽く指で弾いた。
 直ぐ様、ミシェルの眼前に立体映像が浮かび上がる。
「これが、君の主人となる人物だ」
 虚空に浮かんでいるのは、軍服を纏った若い男だ。
 しかも、将校階級を示す華麗かつ荘厳な軍服を着用している。
 ミシェルは、自分の主となる男の映像をまじまじと見つめた。
「太陽系同盟軍第三艦隊所属――カケル・アマミヤ少佐。二十五歳だ」
「二十五歳で少佐ですか?」
 ミシェルは驚愕に目を剥いた。
 二十五歳で少佐とは、かなり早い出世だ。それだけ、この立体映像の男が優秀だということだろう。
 均整のとれた長身、端整な顔立ち――第一印象は悪くない。
 カケル・アマミヤは非の打ち所のない青年将校のように見受けられた。
 ――もしかしたら、わたしは今、宇宙一の幸せ者なのかもしれない!
 ミシェルは胸中で渦巻く歓喜を抑えるように、ゴクリと唾を呑み込んだ。
「アマミヤ少佐は、実直で誠実な優れた将校だと聞いている。彼の元でなら、君の素晴らしい頭脳も充分に活かせるはずだ。――どうだね、悪くない話だろう」
 学院長の言葉に、ミシェルは必要以上に大きく頷いた。
 悪くないどころか最高の話だ。
 補佐官の未来は、遣える主人によって決まる。
 将来有望な青年将校は、ミシェルにとっても理想――最上の就職先だった。
 三年間の苦行を乗り越えてきた結果、自分は見事、輝かしい未来への切符を手に入れたのだ。
 あまりの嬉しさに自然と顔が綻ぶ。
「ミシェル・ギルフォート、謹んでお話を受けさせていただきます!」
 新しい生活に心躍らせ、ミシェルは喜色満面の笑顔で最敬礼した。



     「Ⅰ」へ続く




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2009.06.18 / Top↑
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