ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 翌夜、数人の従者と侍女のメイファと共に、ローズ・マリィはラパスの滞在する城塞都市ドレイクへと迎え入れられた。
 無論、ラパスに輿入れするためである。
 カシミア軍に占拠された都市を目の当りにして、ローズ・マリィの心は暗く沈んでいた。
 無残にも焼き払われた家々。
 何かは判断もつかぬ瓦礫の山……。
 ドレイク城へと続く道は、ローズ・マリィにとって荊の道だった。
 好奇の目でジロジロと自分を検分するカシミア兵に混じって、傷ついたイタール国民の姿も多く見られた。
 自国の高貴な姫が敵国カシミアの王に嫁ぐことを嘆く者が大半だったが、中にはあからさまに『裏切り者!』と罵る者もいた……。



「わたくしは誰? 何故、ここにいるの?」
《月光の美姫》の唇から嘆息が洩れる。
 ローズ・マリィは、ドレイク城の一室で憂鬱な時を過ごしていた。
 ――わたくしは嫁ぐカシミアからは歓迎されず、同胞のイタール人にも謗られている。
 豪奢な天蓋付きの寝台に腰掛けながら、悔しさと虚しさにきつく唇を噛み締める。
 今現在、ローズ・マリィは待機の状態だった。
 夫となるラパスは多忙らしく、入城してから一度も顔を合わせていない。
 そのラパスが、これからここへやってくるのだ。
 婚礼の契りを交わすために――
 輝く銀の王冠に、美しい銀の婚礼衣装。
 身を飾る煌めく宝石たち。
 それら全ては、ラパスを迎えるために用意されたものだった。
「――ラパス陛下……?」
 俄かに廊下がザワザワと騒がしくなったので、ローズ・マリィは顔を上げ、部屋の入口に視線を馳せんじた。
「ローズ・マリィ――我が姫君、失礼いたす」
 凛とした低い声が告げ、扉が開く。
 音も立てずに、一人の青年が颯爽と室内に滑り込んできた。



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2009.06.18 / Top↑
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