ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「――ハッ!」
 落雷に似た衝撃が全身を駆け巡った。
「……アーナス様?」
 ルーク・ベイは足を止め、不安そうに後ろを振り返る。
「どうしたのじゃ、ルーク」
 前を行くアガシャが、ルークの異変に気づき、足を止めた。
 彼に倣ってリオンとアリシュアも立ち止まり、ルークの元へ集ってくる。
 彼らは秘められた地下通路からレイ城を脱し、既にエカレシュから遠く離れた地に逃げ延びていた。
「今……何か、雷のようなものが……?」
 ルークは怪訝な面持ちで、レイ城のある方角に視線を馳せる。
「むっ、ルーク! 姫様からいただいた剣が帯電しておるぞっ!」
 アガシャが驚きの声をあげ、ルークの腰を指差す。
「――――!?」
 ルークは腰に帯びた剣に視線を下げ、大きく息を呑み込んだ。
 アーナスから授かった剣に、青白い静電気が纏わりついているのだ。
「まっ、まさかっ――」
 リオンが慌ててルークに駆け寄り、その剣の柄を握った。
 同時に、
 オギャアッ! オギャアッ!
 今までリオンの腕の中で大人しく眠っていたロレーヌが、パチッと目を開き、急に泣き出したのだ。
「まあ、どうしたの、ロレーヌ?」
 アリシュアがリオンの腕からロレーヌを預かり、必死にあやす。
「ま……まさか……!」
 リオンの額を冷たい汗が伝った。
「そんなっ、アーナス様っ――!」
 ルークは甲高い悲鳴をあげながら剣を凝視した。
「まさか、まさかっ!」
 リオンが思い切って剣を鞘から抜き出す。
 刹那、眩い閃光が刀身から放たれた。
 剣は意志を持つようにリオンの手から離れ、宙に静止した。
 美しい透明の刃。
 この世に一つしか存在しない神の剣が、青く発光している。
 その刀身最強部には、しっかりと銘が刻まれていた。
「……『我、エルロラ、汝を祝福す』」
 ルークは茫然自失の体でそれを読み上げた。
「なんっ……でっ……? どうしてです、アーナス様っ!?」
 ようやくルークは、アーナスが本物の『ローラ』を自分に託したことを悟った。
 あの時、アーナスが垣間見せた剣の方が、よく似た偽物だったのだ……。
「どうして? ローラがなきゃ魔剣ザハークに勝てないこと――解ってるはずじゃないですかっ!?」
 ルークは非難めかしい口調で傍にはいない主君に問いかけた。
 それは、自分自身に対する責めでもあった。アーナスから剣を渡された時、この目で刀身を確認しなかったのは明らかに自分の過ちだ……。
「姫様。何故、ローラを手放されたのじゃ?」
 アガシャが途方に暮れたような呟きを洩らす。
 シィィィィィィンッ……!
 唐突にローラの刃が不可思議な音を立てた。皆の視線がローラに集中する。
「おおっ……ローラが戸惑っておる」
 アガシャが震える手をローラへと伸ばす。
 シィィィィィィンッ……!
 刃鳴りは止まない。
「まるで……まるで主の姿を求め、捜しているようじゃ」
 アガシャは宙に浮くローラを手に取った。
 青い冷光が忙しなく点滅を繰り返す。
「何故、そのように怯えておる? 何故、そのように悲しむ?」
 返答がないのを熟知していても、ローラに語りかけずにはいられなかった。
「ああっ……ああぁぁぁぁぁぁっっっ!」
 ルークは頭を掻き毟り、泣き出しそうな表情でローラを見つめた。
「まさかアーナス様の身に何か――」
 蒼白な顔で、アガシャの手からローラをもぎ取る。
「僕、城へ戻ります!」
 ルークはローラを鞘に納めると、素早く身を翻した。
「ルークッッ!」
「アーナス様に……アーナス様にローラを届けなきゃ!」
「待てっ、ルーク」
 アガシャの制止をきかずに、ルークは今来た道を引き返し始めた。
「わしはルークを追います。リオン様とアリシュア様はロレーヌ様を連れて、先へお進み下されっ!」
 ルークを追い、アガシャはヨタヨタと走り出す。
「シレン! わしに力を!」
 ビュウッ! と風が吹き、アガシャの身体を軽くした。風の精霊が、走るアガシャを補助しているのだ。すぐに、決死の面持ちで走るルークに追いつく。
 二人はリオンとアリシュアの引き止める声を無視して、走り続けた。
「アーナス様! アーナス様っ!」
「姫様……」
 アガシャは涙に濡れた眼差しを遠くのレイ城へと注いだ。
 もう、既に手遅れかもしれない……。
 オギャアッ! オギャアッ!
 冷たい風が、ロレーヌの痛々しい泣き声を運んできた。


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2009.06.20 / Top↑
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