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ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です
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Sun
2009.06.21[19:29]
 自分を見つめる青緑の双眸を見つめ返し、水鏡は軽く笑んだ。
 ――もっとマシな求婚の言葉ないのか?
 正直なところ、心の裡でそう思った。だが、これまで散々瑠櫻を焦らしてきたことを考慮すると彼に対して申し訳なく、流石にそれを口外することは憚られた。
「じゃ、決まりね。オレって、今、天界一の幸せ者かも」
 瑠櫻が満足げに微笑む。いつもの掴み所のない笑顔ではなく、嬉しさのあまりに自然と零れ落ちた微笑だ。
 その笑い顔が思いがけず綺麗だったので、水鏡は柄にもなく赤面してしまった。
 ――な、何故、今更……胸が高鳴るのだ……!?
 トクン、と弾け出した心臓が恨めしく感じられる。
「まあ、な……。だが、どう考えても別居婚で――今とさほど変わらないと思うのだがな?」
 水鏡は瑠櫻に向けて肩を竦めてみせた。
 七天同士の婚姻は認められているが、それぞれ引退するまでは己の一族を率い、護っていかなければならないのだ。当然、どちらかの城に入り浸ることなど赦されない。
 水鏡と彩雅の両親が七天同士の婚姻だったので、それは重々承知している。氷天であった母と水天であった父は、双子がある程度成長するなり、あっさりと引退してしまったのである。もちろん二人で一緒に暮らしたいがためだ。今も氷の一族の領地内で、甘い生活を送っているらしい。
「いや、まあ、そうだけど。オレとしては堂々と水鏡に逢えるのは、やっぱり嬉しいな。おまえの親みたいにバンバン後継者を作って、さっさと引退しよう! で、その後は目眩く相愛の日々だ」
「……嫌な言い方だな」
「え、解りやすくていいだろ? だって、おまえんトコの両親、オレより若いくせにさっさと七天辞めて、未だにいちゃいちゃの日々を送ってるんだよ? アレ、狡いでしょ? どう考えても卑怯だよね?」
「確かに……。我が親ながら、あの相思相愛振りは羨ましいというか、恥ずかしいというか――本当に七天だったのか、と時々本気で疑いたくなる」
 水鏡は苦虫を噛み潰したような顔で言葉を連ねた。
 連れ添って何百年も経つというのに、常に新婚状態が持続しているのだから、ある意味大したものである。
「だが、アレが瑠櫻の理想なのか?」
 ふと、水鏡は真顔で瑠櫻を見遣った。
「そうそう。いいね、ああいう感じ」
「……解った。自信は無いが――出来る限り努力はしよう」
 水鏡が生真面目に頷くと、瑠櫻はパッと表情を明るくし、次いで意味深に微笑んだ。
「よし。じゃあ、早速今日から子作りに――」
 声を弾ませる瑠櫻の脛を軽く蹴り、水鏡はきつく眉根を寄せた。
「ふざけるな。全ては、紫姫魅のことが片付いた後の話だ。――そうだ、怪我! 怪我はどうしたっ!?」
 水鏡はハッと我に返った。
 予期せずして求婚されたのですっかり忘れていたが、瑠櫻は負傷しているのだ。
 水鏡は髪を束ねていた布を解くと、それを勢いよく二つに裂いた。一つを瑠櫻の右腕へ巻き付け、止血する。もう一つは、未だに血を垂れ流している頸部へと優しく巻き付けた。
「――さっ、こんなところで遊んでいる場合ではないぞ」
 応急処置を済ませると、水鏡は神妙な面持ちで瑠櫻に告げた。
「天王様のところへ行かなくてはな。この先、紫姫魅を相手にどうするか……。これ以上、七天の犠牲は出せない」
「ああ、解ってるさ」
 瑠櫻も真摯に同意する。
 如何に天王の頼みとはいえども、七天のうち三人も失った今、紫姫魅の謀叛を他の天上人に隠し通すことは至難の業だ。
 七天――三人の不在。
 それは同時に、天空城を守護する七つの城の《結界》が崩壊しかけていることを意味する。
 七つの城の結界の強度は、七天の力量に比例する。
 失われた七天のうち、鳳凰城と空天には後継者がいる。善地城の地天――蘭麗にも実は御子がいたことが先日判明した。しかし、どちらもまだ一族を統治し、結界を維持するためには幼すぎるのだ。
 風凪城の風天に至っては、翔舞自体が天位を継承して僅か百年強であり、次の継承者すら決まっていないという有り様だ。
 必然的に残る四天で、七つの結界を護らなければならない。それは大変難しいことであり、当然結界の効力も今までよりは格段に落ちる……。
 天王を守護する壁が薄くなっているのだ。
 こんな時に、紫姫魅だけではなく妖魔の襲撃があっては堪ったものではない。
 天王自身、それは重々承知していることだろう。
 だからこそ天王は、七天に招集をかけたのだ。
 紫姫魅の暴走に終止符を打つために――
「……行くか。天空城へ」
 水鏡が瑠櫻に先立って身を翻す。
「天王様の考えなど聞かなくても解るけどね」
 前を行く水鏡には聞こえないような小声で瑠櫻は呟いた。
「始まりも終わりも自らの手で、か――」


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