ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑


 ミシェルは、鋭い一睨みをカケルに与えてからモニターを振り返った。
 モニター脇のパネルの一部が緑色に点滅している。
「ブリッジからですね。きっと船長ですよ」
 ミシェルは机の上からリモコンを引ったくり、モニター画面を切り換えた。
 即座にモニターがメインブリッジ内の映像に切り替わる。
 画面の中央には、ブルーブラックの髪と灰色の瞳を持つ青年が映し出された。
 船長――ラギ・イドゥンである。
「おっと、中佐の地位を蹴って辺境調査局に異動志願した、スクルド一の変わり者のお出ましだ」
 カケルが楽しげにモニターに視線を馳せる。
 ラギは、親友であるカケルの左遷につき合って自ら辺境調査局行きを志願した、とんでもない青年なのだ。
 二十六歳という若さで中佐の地位を獲得していたというのに、勇気ある決断である。
 カケル以上に有望だった将来を何の躊躇もなく捨て去ったのだ。やはり、彼も変人の類に属する人間なのだろう。
「お疲れさまです、船長」
 ミシェルはモニターに向かって敬礼した。
 それを受けてラギが微笑を湛える。
『やあ、お二人さん。痴話喧嘩の最中に悪いんだけど、そろそろ目的地に到着するよ』
「痴話喧嘩なんてしてません。――っと、聞いて下さいよ。隊長ったら、わたしの胸が小さいって言うんですよ!」
 ミシェルはカケルに対する怒りをラギにもぶつけた。
 誰かに愚痴らなければ憤懣は治まりそうにもない。
「いいえ、小さいどころかまな板のようだとまで言われたんですよ! 酷い暴言だと思いませんか? 他人の肉体的コンプレックスいたぶるなんて、卑劣ですよね」
「なんだ、やっぱり気にしてるんじゃないか」
「隊長は黙ってて下さい!」
 カケルの呟きを素早く一蹴し、ミシェルはモニターに向き直った。
「船長、わたしの胸って、そんなに小さいですか?」
『いや、そんなことはないと思うけど……。気になるなら、オレじゃなくてレイラあたりに相談した方がいいよ』
 困ったようにラギが言葉を紡ぐ。
 レイラというのは、ラギの下で働く副船長のことだ。
『噂によると、レイラのあの豊満な胸は特殊薬によってあそこまで育ったらしいからね』
 ラギが冗談混じりに告げた途端、モニターが予告もなく二分割された。
 新たな通信が入ったのだ。
 ラギの姿は画面の右側に押し遣られ、空いた左側に二十代前半と思しき女性が出現する。
『割り込み、失礼します』
 微かな苛立ちを顔に表しながら敬礼したのは、話題の人物――レイラ副船長だった。
『今の話は事実無根です。私の胸は天然です』
 レイラが制服の上からでもはっきりと膨らみの解る豊かな胸を反らす。彼女のバストはIカップという見事な代物なのだ。
『聞いてたのか、レイラ。そんなに気を悪くするなよ。今のは冗談だよ』
『冗談にしても質が悪すぎます。――ミシェル補佐官、胸など気にしない方がいいわよ。大きいのも困りものだわ。男どもの卑猥な話のネタにしかならないんだから』
 肩の上で切り揃えた髪を揺らし、レイラがツンと顎を上向ける。おそらく、ブリッジ内で実体のラギの視線をはね除けたのだろう。
「オイオイ、啀み合いならブリッジでやってくれよ。何も通信回線使ってするほどのことじゃないだろ」
 カケルが煙草を吹かしながら、面倒臭そうにブリッジ組を諫める。
『失礼しました、アマミヤ少佐。これよりスクルドは、惑星アクアへの着陸態勢に入ります。大気圏に突入する際、多少揺れると思いますのでお気をつけを――』
 厳粛な表情を取り戻し、レイラが敬礼する。
 彼女の姿は瞬く間にモニターから消失した。
『そういうことだ、カケル。グロア星系第三惑星アクアに、もうじき到着だ。綺麗な惑星だから、今のうちにモニターで観ておけよ』
 笑顔でそう言い残し、ラギの姿も忽然とモニターから消えた。
 入れ替わりに、一つの惑星がモニターにクローズアップされる。
「綺麗……」
 その惑星の姿を見た瞬間、ミシェルは感嘆の溜息を洩らしていた。
 コバルトブルーに輝く惑星が、ミシェルの心を魅了した。



 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト
2009.06.21 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。