ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「どうして、ディス人がいるんだ!?」
 焦燥も露わなラギの声が響く。
「発砲されたので、応戦します!」
 一応の断りを入れてから、ミシェルは銃のトリガーを引いた。
 銃口から放出された青い光線が、エアバイク上の三つ目――ディス人の眉間を貫く。
 呆気なく、ディス人はバイクから転げ落ちた。
「ミシェル、奴ら複数だ。逃げるぞ!」
 カケルの鋭い声が響く。
 ミシェルが振り向くと、彼は銃を手に取り、別のディス人と銃撃戦を繰り広げていた。
「どういう訳か知らないけど、敵なら戦うしかないね」
 軽やかな調子でラギが告げる。先ほどの焦りなど微塵も感じさせない不敵な笑みを口元に刻み、彼はレーザー銃を連射した。
 茂みの奥で悲鳴が迸る。
 僅かに遅れて爆発音が響いた。
 ラギの放った光弾がエアバイクを粉砕したのだろう。
 カケルもラギも、戦艦を降りたとはいえ歴とした軍人――三ヶ月前まで最前線で戦っていた将校だ。その銃の腕に鈍りはないらしい。
「ミシェル、走れるか?」
 いつになく真剣な表情でカケルが走り寄ってくる。
「問題ありません。学院で散々訓練させられましたから!」
 言いながら、ミシェルは俊敏に地を蹴っていた。
 厳しい訓練の日々が想い出される。
 心構えは、既に冷徹な補佐官のものへと切り替わっていた。
「ラギ、行くぞ!」
 カケルの促しに、ラギが応戦しながら疾駆を開始する。
 ミシェルは先頭に立ち、エアバイクの通れないような狭い木々の隙間を選んで駆け続けた。
 ディス人たちは執拗に追ってくる。草木に隠されて姿は見えないが、エンジン音はしっかりと耳に届いていた。
「あいつら、いきなり発砲してきやがるなんて尋常じゃないな。何をいきり立ってんだ」
 ミシェルのすぐ後ろで、カケルが忌々しげに吐き捨てる。
「Ⅱ系のディス人がⅢ系にいること自体、おかしいのさ」
 しんがりを務めるラギが苦々しげに応じる。
 ディス人というのは、銀河Ⅱ系イダヴェル星系に属するディス星先住民の呼称だ。人類より小柄で、額に縦長の第三の目があることが外見的な特徴である。
 銀河Ⅲ系から見て、Ⅱ系は銀河系を挟んだ向こう側に存在している。つまり、Ⅱ系からⅢ系に来るには、銀河系のワープゲートを使用しなければならないのだ。
 銀河系のワープゲートを利用しなくても航海は可能だが、それでは時間がかかりすぎる。
 それに現在、銀河Ⅱ系は銀河系と対立関係にある。至る所で戦争が展開されているはずなのだ。そんな状況の中、銀河系軍部の目をかいくぐって銀河系所有のワープゲートを利用するのは至難の業のはずだ。
「Ⅱ系の連中、直接Ⅲ系に跳べるワープ航法でも発見したのかもな」
「もしかしたら、Ⅲ系を発見したのはⅡ系の方が早かったのかもしれない。オレたちが知らないだけで、どこかにⅡ系直通のワープゲートが存在する可能もあるね」
「だとしたら、厄介だな。Ⅱ系の連中、Ⅲ系側からも銀河系を攻撃できるじゃないか」
 カケルとラギの会話が耳に飛び込んでくる。
 だが、ミシェルの意識は自分たちと併走しているエアバイクのエンジン音に向いていた。二人の会話に口を挟む余裕はない。
 ディス人は自分たちを追跡しているようだが、攻撃は仕掛けてこない。こちらが相手の姿を確認できないように、向こうもミシェルたちの姿を捉えられないのだろう。生い茂る草木がミシェルたちの姿を隠してくれているのだ。
 だが、その密林ももうじき終わる。
 その先にあるのは、白い砂浜と広大な海だけだ。
「隊長、もうすぐ海辺に出ます。全調査員にスクルドへの帰還命令を出した方が賢明だと思いますけど」
 ミシェルは渋い声音で背後のカケルに進言した。振り向いたりはしなかった。
 木々の隙間からは、早くも碧く輝く海面が見え隠れしている。密林を飛び出した途端、戦闘が再開されるのは明白だ。とても気を抜ける状況ではない。
「オッケー。非常事態一発ボタンだな」
 カケルが素直に返答する。
 彼の所持する超小型コンピュータには、隊長だけの特権――全船員緊急召集の送信キーが備えつけられているのだ。それを押しさえすれば、非常事態警報がスクルドの船内に鳴り響き、個人の所有するコンピュータには帰還命令を表す電子音が鳴るシステムだ。
 ミシェルが砂浜に出る直前まで緊急帰還を提言しなかったのは、カケルがそれを押すことによりミシェルとラギのコンピュータも鳴ってしまうからだ。
 鳴れば、否応なしにディス人たちに居場所が知れてしまう。
「隊長、いいですか?」
「いつでもいいぞ」
「では、飛び出します!」
 威勢良く宣言し、ミシェルは思い切り地面を蹴りつけた。




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2009.06.21 / Top↑
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