ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「クリスッ!?」
 反射的にミシェルは駆け出していた。
「動かないで下さい!」
 制止の声が飛ぶ。
 クリスはミシェルに視線を向けることなく、砂浜を蹴った。
 左手には、既にスコーピオンが装着されている。
 再び爆音が轟いた。
 ――何……? 銃声なの?
 音はするのにレーザーは見えない。
 だが、それは紛れもなく銃撃だった。
 その証拠に、クリスの左腕からまた血が噴き出す。不可解かつ異様な光景だった。
 左の腕と肩から大量の血を流しながらも、怯まずにクリスは疾駆していた。
 エアバイクの背後で蠢く影に目がけて、スコーピオンが振るわれる。
 断末魔の叫び――
 先刻の戦闘で生き残っていたディス人がいたのだ。今まで、ずっと狙撃の機会を窺っていたのだろう。
 息絶えたディス人の身体からスコーピオンを引き抜き、クリスが振り返る。
「クリスッ!」
 クリスの顔を見た途端、ミシェルは弾かれたように駆け出していた。
 いつもは冷静な彼が顔を歪めている。
 苦痛に耐えるように唇を噛み締めている。
 左の肩と二の腕から泉のように溢れ出す血液が、ひどく禍々しかった。
 ミシェルが辿り着く直前、彼の身体は砂浜に崩れ落ちた。
「しっかりして!」
 ミシェルは、うつ伏せになったクリスの身体を静かに仰向けた。
 出血が酷い。
 躊躇わずに自分の制服を切り裂き、止血処置を開始した。
「クリス、目を開けて! お願い……!」
 必死に声をかけながら、手当を施す。
 クリスの身体を穿った二つの傷痕を見て、ミシェルは痛いほど唇を噛み締めた。
 見たことのない傷痕だ。
 レーザーによる皮膚の焼け焦げは見受けられない。
 丸く空いた穴から湧き出す血が、レーザー銃による負傷ではないことを明示していた。
 ミシェルは泣きそうになる己れを叱咤し、斃れたディス人を見遣った。
 ディス人の手には黒光りする鉄の塊が握られている。
 恐ろしく古めかしい銃だった。
 ――旧式の銃だわ。
 それは、レーザーではなく鉄の弾丸を射出する拳銃だった。
 現物など初めて見る。地球では、遙か昔に姿を消している旧型火器だ。
「大昔の銃……。どうしよう? コレ、きっと弾丸ってヤツが体内に残ってるんだわ」
 眉間に皺を寄せながら応急処置を続ける。
 体内に残留する弾丸を摘出するには、スクルドに戻るしか術はない。
「死なないで」
 意識を失ってしまったクリスの顔から視線を引き剥がし、ミシェルは立ち上がった。
 使えそうなエアバイクを捜し、エンジンを吹かす。
 クリスの脇にバイクを停車させると、急いで飛び降りた。
 挫けそうになる己れを奮い立たせ、クリスをバイクに乗せる。
「お願いだから死なないでよ、クリス」
 ミシェルは祈りを込めてハンドルを握ると、エアバイクを発進させた。


     「Ⅳ」へ続く


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2009.06.22 / Top↑
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