ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
     *


「ミシェル!」
 プライベート・ルームへ戻る途中、ミシェルはカケルとミスミに出会した。
 ミシェルを発見するなり、ミスミは嬉しそうに駆けて寄ってくる。
 彼は初めて逢った時のような半裸姿ではなく、ちゃんと衣服を纏っていた。カケルの服を借りたのだろう。丈の方はそうでもないが、痩身ゆえに横幅は結構ダブついている。
「隊長の服、意外と似合ってますね」
 ミシェルが率直な感想を述べると、カケルはニヤリと唇を歪めた。
「ミスミは俺と同じでハンサムだからな」
「隊長とずっと一緒にいたの、ミスミ」
 カケルの自画自賛を敢えて無視し、ミシェルはミスミに向き直った。
 ミシェルの視線を受けて、ミスミが微笑む。
「カケル、イッショ! フネ、ミタ」
「あら、珍しいですね。隊長自らスクルドを案内してあげたんですか?」
 驚きの眼差しをカケルに注ぐと、彼はヒョイと肩を聳やかした。
「他にすることもないしな。それに何だか解らんが、ミスミの奴、俺にもなついたみたいだぞ。――おまえの方こそ、どこをほっつき歩いてたんだ?」
「クリスのところです。船長にちょっと意地悪しちゃいました」
「――意地悪? ああ、クリスのことか……。ラギにはいい薬だろ。あいつは一度、本気で恋愛してみればいいんだ」
 カケルが数度目をしばたたいた後、苦々しげに笑う。
「隊長はあるんですか、本気で恋したこと?」
 ミシェルが素早く切り返すと、カケルは皮肉っぽく口の端を吊り上げた。
「忘れたな、そんな大昔のこと」
 僅か一瞬、黒曜石の双眸に昏い翳りが走る。
 だが、単に光の加減でそう見えただけなのかもしれない。
 ミシェルが瞬きを一つした後には、ものぐさ隊長の表情は常と変わらず不貞不貞しかった。
「それよりも、今はミスミをどうするか考えないとな。地球に連れ帰るのは問題ないが、やっぱり調査局本部に報告しなきゃならないだろうし」
 簡単に話をはぐらかされ、ミシェルは胸中で溜息をついた。カケルは自分の恋愛について語る気など更々ないらしい。
 ミシェルも彼の私生活を根ほり葉ほり詮索する気はないので、それ以上の質問は控えることにした。
「アクア人の生態は未だに謎ですから、学者たちが研究したがるでしょうね。でも、わたし、ミスミを人体実験紛いの研究につき合わせるのは嫌ですよ」
「解ってる。帰還するまでに何か手だてを考えておこう」
「ディス人から奪ったディスクを交渉材料にすれば、ミスミを隊長の保護下に置くことくらい可能だと思います。あのディスクには、銀河Ⅱ系のワープゲート資料も保存されていますからね」
「そうだな。ミスミだって、ミシェルの傍から離れるのは不安だろうしな」
 カケルがミスミに視線を投げると、ミスミはコクコクと何度も頷いた。
「ミシェル、スキ」
 ミスミに無垢な笑顔を向けられて、ミシェルは少々面食らった。
 出逢ってから何度も見た笑顔、何度も耳にした言葉なのに、不思議と胸が弾む。
 心が緊張する。
 胸の高鳴りは、紛れもなくミスミに惹かれ始めている証拠だ。
「ありがとう」
 ミシェルはぎこちない笑みを返した。
 ――わたしも船長のこと言えないわね。
 異星の少年に魅力を感じているのは事実だ。
 ――同性同士でも恋愛は可能。だけど、異星人間の恋愛は成り立つのかしら?
 脳裏に疑問が浮かび上がる。
 答を探すために回転し始めた頭脳を、ミシェルは慌てて停止させた。
 今、思考を巡らせても仕方がない。
 答は、いずれ自然と導き出されるだろう。
「ねえ、ミスミ。地球に着くまで、あなたやアクアのことをたくさん教えてね」
 ミシェルは気を取り直し、明るい笑顔をミスミに贈った。
 ミスミの顔にも優しい笑みが浮かぶ。
 彼の故郷であるアクアと同じ澄んだマリンブルーの双眸が、ひたむきな情熱を孕み、じっとミシェルを見つめていた。
 その瞳の中に、ミシェルは新しい世界を――美しい楽園を見たような気がした。


      「Ⅴ」へ続く



 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト
2009.06.22 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。