ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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    Ⅴ



 地球へと続く最後のワープ・ゲートを無事に通過した。
 アクアを出立してから約二ヶ月、宇宙船スクルドは平穏かつ平和に宇宙空間を航海している。
 あと一日もすれば、地球へ帰還できる。
 その喜びに船内は浮き立ち、船員たちの顔にも笑顔が絶えなかった。
 無論、ミシェルも例外ではない。
 軽快な足取りで通路を進み、ミシェルはカケルの私室の前で足を止めた。
 地球到着を目前にして緩む心と頬を無理矢理引き締め、インターフォンを押す。
「隊長、入りますよ」
 一声かけ、室内に足を踏み入れた瞬間、ミシェルは愕然とその場に凍りついた。
 視界の端を水に濡れた裸の上半身がよぎる。
 ミシェルは目の前に現れた裸身を見て思い切り口元を引きつらせた。
「おっ、どうした?」
 腰にバスタオルを巻きつけただけの姿で、カケルが振り返る。
「ふ、服くらい着て下さい!」
 ミシェルは羞恥に頬を赤らめ、乱暴に言葉を放った。
「勝手に入ってきて、なに言ってやがる」
 口の端に笑みを刻み、カケルはベッドサイドのテーブルから煙草を取り上げた。
 ベッドに腰かけ、愛用のジッポで点火すると煙草を吹かし始める。
「一応、断りの言葉はかけました」
 できるだけカケルを見ないようにしながら、ミシェルは憤然と抗議する。
 直後、近くで自動ドアが開く音がした。
「ミシェル、いるの?」
 ミスミの声が耳に届く。
 ミシェルはギョッとし、慌てて室内に視線を巡らせた。
 バスルームへと繋がるドアからミスミが顔を覗かせている。カケル同様、彼も裸だった。
「ちょっと、そのまま出てこないでよっ!!」
 ミシェルは物凄い勢いでドアへ駆け寄り、コンソールのスイッチを押した。
 音も立てずにドアが閉じる。
「服を着てから出てきてね!」
 早鐘のように鳴り響く鼓動に狼狽を覚えながら、ミシェルは早口に告げた。
『解った』というミスミの返事が中から聞こえてくる。
 ミシェルはホッと息を吐き、ドアに背を向けた。
 恨めしさと怒りを込めて、紫煙を燻らせるカケルを睨めつける。
「何やってたんですか、隊長」
「何って、別に……。ミスミが人間の肉体構造に興味があるって言うから、一緒に風呂に入っただけだ」
「へ、変なことしてないですよね?」
「するわけないだろ。妙な心配はするな。俺は金髪専門だ」
 冷たい一瞥をミシェルに与え、カケルは煙を大きく吐き出した。
「それにしても、あいつも一人前の男なんだなぁ」
 しばし流れる紫煙を眺めた後、カケルはミシェルに向かってからかうように微笑した。
「雄の本能は人間と変わらないらしい。あいつ、人間がどうやって種の存続を行うのか、物凄く関心があるみたいだぞ。しきりに話を聞きたがる」
「そ、そりゃあ、アクア人とは違うでしょうからねっ!」
 半ば自棄になりながらミシェルは応じた。
 人間とは異なる種族だが、ミスミは紛れもなく『男』だ。
 だが、『綺麗な顔の異星人』ということで非常に実感しづらい。
 ミスミが性に興味を抱いていると聞いて、動揺すら感じる。
 様々な事柄に興味を持つのは悪いことではない。
 しかし、その一点に関してだけは、ミスミに仄かな恋心を抱いているミシェルとしては複雑な心境にならざるを得なかった。
「そうでもないみたいぞ。喜べ、ミシェル」
「――はい?」
 怪訝な面持ちで訊き返すと、カケルは意地の悪い笑みを浮かべた。
「さっき風呂で裸を見たけど、人間とも可能みたいだぞ――セックス。よかったな」
 カケルの不粋な一言にミシェルは驚愕し、次に激しく狼狽した。
 体内の血液が一気に沸騰した。全身が熱くなる。
「サイッテー!」
 真っ赤な顔でカケルを怒鳴りつけ、ミシェルは荒い足取りで出口へ引き返した。
「オイ、何しに来たんだ、おまえ?」
「忘れましたっ!!」
 憤然と言い返し、ミシェルは部屋を飛び出した。



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2009.06.22 / Top↑
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