ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 娯楽エリアに立ち並ぶ飲食店――その中にあるカフェにミシェルは直行した。
 カウンターで注文したコーヒーを受け取り、店内を見回す。
 目的の人物は、すぐに発見することができた。
 壁に添ったテーブルの一つに、ラギが腰を落ち着けている。
 彼の隣にはドクター・イブリスが座し、彼女の向かいにはレイラ副船長が座っていた。
 ミシェルは一団を目指してツカツカと歩み寄ると、片手に持ったソーサーをテーブルの上に乱暴に置いた。
「お邪魔します」
 つっけんどんに告げ、皆の返事を待たずに勝手にイスに座る。
「やあ、ミシェル。何だか、ご機嫌斜めみたいだね?」
 ラギがにこやかなに挨拶を述べる。
「そんなことはありません」
 レイラが手渡してくれたミルクをドボドホとカップに注ぎながら、ミシェルは険のある目つきでラギを見遣った。
 ――誰のせいだと思ってるのよ!
 胸中の憤怒を懸命に堪え、ミシェルはギリリと歯噛みした。
「ミルク、入れすぎじゃないかい?」
「マイルドなのが好きなんです!」
 困惑気味に微笑むラギをもう一度睨み、ミシェルはようやくミルクポットを手放した。
「あら、もしかして、ミシェル補佐官も船長に用事なの?」
 イブリスが好奇心に輝く眼差しでミシェルを見つめ、妖艶に微笑む。
「船長、言いたいことは皆同じようですよ」
 レイラが自慢の胸を揺らしながら、ツンと顎を反らしてみせる。
「オ、オレ、何か悪いことしたかな?」
 女性三人に冷たい視線を浴びせられ、ラギは戸惑っているようだった。皆と視線を合わせないよう、宙に目を泳がせている。
 ミシェルはコーヒーの中にスプーンを突っ込み、物凄い勢いで掻き混ぜながら、じっとラギを見据えた。
「身に覚えがないとは言わせないわよ。最近、あたしのところに避妊薬をもらいに来る女どもが急増してるんだけど? アレ、全部船長の相手でしょ?」
 悠然と足を組み替え、イブリスがフンと鼻を鳴らす。
「いつにも増して励んでるみたいね。船長にうつつを抜かす女のことなんてどうでもいいけど、あたしのところに相談に来られても困るのよね。大体どうして、このあたしが女どもの人生相談に乗らなきゃならないのよ。不愉快極まりないわ」
 一気に言葉を捲し立て、イブリスは白衣から煙草を取り出した。大儀そうに火を点ける。
「この上、誰かが妊娠なんて面倒なことは、あたしは御免よ」
「い、いや、それは充分注意してるから――」
 慌てて弁明しようとするラギに向かい、イブリスは情け容赦なく紫煙を吹きつけた。
 ラギが顔をしかめ、溜息を落とす。
「……解った。今後、自粛するよ」
「情けない。女遊びが激化した原因は、クリス補佐官でしょう」
 レイラが呆れ顔でラギを見遣る。
 とても上司に向けられているとは思えない蔑みの眼差しだった。
「ブリッジで、あからさまにクリス補佐官を避けるのはやめていただけませんか? ブリッジ内の雰囲気が微妙に荒んで、副官の私としては結構辛いのですが」
「わ、解った……。それも改めるよ」
 非難の集中砲火を浴びて、ラギは弱り切っているようである。
 必死に笑顔を取り繕っているが、内心ひどくビクビクしているに違いない。
「本当に解ってるんですか? 船長の態度がはっきりしないからいけないんですよ」
 レイラの叱咤は止まらない。
「はっきりしないって――何が?」
「ですから、クリス補佐官のことです。無視するくせに、その後、未練がましく目で追ったりしていて、部下の私から見ても物凄く情けないです」
「目で追ってるなんて、そんな自覚はないけど……」
「船長、あまり私を怒らせないで下さい。今度そんな寝惚けたことを口走ったら、回し蹴り喰らわせて、ハッチから宇宙空間へ放り出します」
 冷徹なレイラの宣告に、ラギの頬が引きつる。
「……了解」
「男女問わず、このスクルド内でクリス補佐官を狙っている人間が何人いると思ってるんですか? 私のデータでは最低でも二百人です」
「そんなことデータ収集するもんじゃないよ」
「真面目に聞いて下さい。船長にその気がないなら、彼を束縛せずにその二百人にもチャンスをあげたらどうなんですか?」
「クリスを束縛してるつもりはないよ。それに、誰がクリスを好きになろうと、クリスが誰を好きになろうと――それは個人の自由だ。オレが口出しすることじゃない」
 開き直ったとも投げ遣りともとれる口調で、ラギが言い放つ。
 その瞬間、ミシェルの頭の中でプチッと何かが切れた。



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2009.06.22 / Top↑
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