ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 窓の外に広がる漆黒の宇宙に、惑星が一つポツリと浮かんでいた。
 乾いた大地を象徴する砂色の惑星。
 海を示す青は、申し訳程度に点在しているだけの淋しい惑星だった。
「あれが地球よ」
 窓際に設置されたベンチに腰かけながら、ミシェルは嘆息を洩らした。
 娯楽エリアにある公園の窓からは、闇に浮かび上がる地球の姿がよく見える。
 ミスミに地球を見せるために、ミシェルはここに彼を連れてきたのだ。
 地球は肉眼で見える距離に迫っている。
 無事に帰還できることは嬉しいが、奇妙な寂寥感がミシェルの胸には芽生えていた。
 碧い楽園――惑星アクアを見た後だけに、地球の姿が余計に嘆かわしく感じられてならない。地球は、アクアとは正反対の荒廃した惑星だ。
「あそこが、ミシェルの住む星なの?」
 ミスミの唇が流暢な言葉を紡ぐ。初めて逢った時とは比べものにならないほど、彼の言語能力は発達していた。
「そう、地球よ。わたしたち人類は、あの星の海から生まれて進化したの」
「海、少ないね」
「一千年くらい前までは、アクアほどじゃないけれど美しい水の惑星だったのよ。わたしが生まれるずーっと前のことだから、実際に見たことはないけどね」
 窓外に浮かぶ地球を眺め、ミシェルは僅かに目を細めた。
 遙か昔の美しかったという地球のことを思うと、哀切の念が込み上げてくる。
 碧い地球を傲慢に蹂躙し、破壊したのは、他ならぬ人類なのだ。
 そして、今も地球は人類に酷使され、更に疲弊し、摩耗し続けている……。
 地球がかつてのような美しい姿を取り戻すことは、もう二度とないだろう。
「二酸化炭素の増加による温暖化。フロンガスによるオゾン層の破壊。エルニーニョ現象や酸性雨。海洋汚染。熱帯林の減少――大地の急速な砂漠化。野生動物種の激減に、有害廃棄物の未処理投棄。原子力発電所の臨界事故。その他、様々な事象現象により地球は徐々に汚染され、壊されていったのよ……。大西洋も太平洋も――大きな海はみんな、原初の四分の一にも満たない大きさに干上がってしまったそうよ。代わりに広がったのが、砂の海――砂漠よ」
 砂色の地球に視点を据えたまま、ミシェルは独り言のように呟いた。
「砂漠、見たことない」
 ミスミの言葉にミシェルは地球から視線を引き剥がし、彼を見つめた。
「地球に着いたら、嫌でも見ることができるわよ」
 ミシェルは苦笑を浮かべた。
 ミスミの碧い双眸は好奇心に輝いている。海に囲まれて育った彼には、砂漠がどんなものなのか想像もつかないのだろう。
「あの星で、ミシェルと一緒に暮らすんだね」
「海が少なくてガッカリするかもしれないけど、我慢してね」
「ボクはミシェルの傍にいられるだけで、嬉しいよ。ミシェルはボクの運命の人」
 ミスミの顔に柔らかい笑みが広がる。
 面と向かって告白されて、ミシェルは恥ずかしさに赤面した。



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2009.06.22 / Top↑
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