ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
   



 黄金色の光が降り注いでいる。
 あまりの眩さに、ミシェルは眠りから醒めた。
 ゆっくりと瞼を押し上げる。
 陽光がベッド脇の窓から射し込んでいた。
 ――ああ、地球に帰って来たんだった。
 寝起きの頭で、漫然とそんなことを思う。
 宇宙船スクルドが地球に帰還してから、十日が経過している。
 だが、ミシェルの肉体は未だにその現実に慣れてはいなかった。四ヶ月以上にも及ぶ宇宙航海が、五感を鈍らせている。典型的な宇宙ボケだった。
 宇宙空間では決して味わうことのできなかった太陽の光が、今のミシェルには強烈すぎた。眩い陽射しを避けるように、片手を目の上に翳す。
 しばらくそのままボンヤリしていると、自動ドアの開く音が耳を掠めた。
「ミシェル、起きたの?」
 指の隙間からミスミの顔が覗く。シャワーを浴びてきた直後なのか、碧い髪は水に濡れていた。素肌の胸元では、涙型の碧い宝石が揺れている。
「おはよう」
 寝惚けた声で応じ、ミシェルは身を起こした。
 ベッドに座り直したところで、はたと目を瞠る。自分が一糸纏わぬ裸身であることを思い出したのだ。
 直ぐ様、ミスミの笑い声が降ってくる。
 同時に、肩にバスタオルがかけられた。
「おはよう、ミシェル」
 ミスミの唇がミシェルの額に触れる。彼は柔和な笑みを浮かべた後、クローゼットから衣類を取り出し、手早く着衣した。
「あれ、今日から仕事……だったかしら?」
 バスタオルを胸の前で掻き合わせながら、ミシェルは独り言ちた。
 長い航海の後、辺境調査第七隊には十日間の休暇が与えられた。確か、それは昨日で終わりだったはずだ。
「仕事なの? じゃあ、ボク、朝食作るよ」
「ありがとう」
 笑顔で寝室を後にするミスミを見て、ミシェルは急いでベッドから抜け出した。バスタオルを巻き直し、彼の後を追う。
 いつまでも宇宙ボケに浸っているわけにはいかない。
 自分には補佐官職という激務が待っているのだ。
 リビングに出ると、ミスミは隣接するキッチンで冷蔵庫を覗いていた。そこからミネラルウォーターの瓶を取り出し、次々と食卓に並べている。
 ミスミと二人で暮らし始めて十日――彼は随分と地球の生活様式に慣れたようだった。ミシェルの家の中を勝手知ったる様子で歩き回っている。
「水が大切なのは解るけど、ちゃんとご飯も食べなきゃダメよ」
 食卓に並べられた夥しい数の水を見て、ミシェルは苦笑した。
 アクア人の主食は、水なのだ。他の食料も口にするが、基本的に水さえあれば日々の生活に何ら支障は来さないらしい。
 全くもって不可思議な生態である。
「解った」
 簡素に応じ、ミスミは一本目の瓶に口をつけた。
 食卓に並べられた大量の水は、十分と経たないうちに無くなるだろう。
 貪るように水を呑み始めたミスミにもう一度苦笑を向け、ミシェルはバスルームへと向かった。




 にほんブログ村 小説ブログへ 
← NEXT
→ BACK
スポンサーサイト
2009.06.23 / Top↑
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。