ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 天王居城――天空城


 天空城の奥深くに位置する謁見の間に、最後の招待客が通された。
 入室したのは、水天・水鏡と雷天・瑠櫻の二人。
 室内には既に残りの七天――氷天・彩雅と炎天・綺璃が控えていた。
 余ほど長く待たされているのか、扉を開けて入って来たのが天王ではないと知ると、どちらも顔に落胆の色を滲ませた。
「――何だ。二人揃ってのお出ましか?」
 綺璃が気を取り直したように水鏡と瑠櫻に視線を馳せ、意味深な笑みを浮かべる。幾分、からかいを含んだ口調だった。
「もちろん。オレと水鏡は運命の糸で結ばれてるからね。もう離れられない関係なの」
 瑠櫻が満面の笑みで応じる。
 対照的に、水鏡の反応は冷ややかなものだった。どさくさに紛れて腰を抱き寄せようとした瑠櫻の手をピシャリとはね除け、僅かに眉根を寄せる。
「綺璃も瑠櫻も、今はそんな軽口を叩いている場合じゃないだろ」
 綺璃に、瑠櫻との中を揶揄されたことが気に食わなかったか、もしくは気恥ずかしかったのだろう。水鏡は二人から思い切り顔を背けると、双子の兄へと歩み寄った。
 そんな彼女の態度に、綺璃と瑠櫻は同時に肩を聳やかし、彩雅は苦笑した。
「兄者、天王様は?」
 水鏡は彩雅の真向かいで立ち止まると、自分より少しばかり優しい面立ちをした兄を見上げた。
「まだお見えになっていないよ。約束の時間は疾うに過ぎているのだけれど……」
「そうか。――七天も、我ら四人だけになってしまったな」
 寂しげに言葉を紡ぐ水鏡。
 その肩に、無言で彩雅の手が添えられた。それだけで安堵を覚えたのか、水鏡はちらと兄を見返して微笑んだ。
「あっという間に半数だな」
 綺璃が紅い前髪をうざったそうに手で掻き上げ、憮然と相槌を打つ。
「翔舞に蘭麗に続き――まさか迦羅紗まで死ぬとはな。しかも自らの手で死を選ぶなんて……」
 己も進んで紫姫魅に生命を差し出そうとしたことを棚に上げ、綺璃は苦々しく呟いた。言葉に批判や否定の色は感じられない。ただ、ひたすらに残念そうな口振りだった……。
「迦羅紗のことはいいんだよ。何であんなに意地の張り合いをしてたのか知らないけど――あの二人はアレで相思相愛だったんだからさ。迦羅紗も、愛する者に二度も先立たれるのは辛かったんじゃないの」
 瑠櫻が敢えて軽い口調で述べる。
 彼も迦羅紗と同じく妻に先立たれている。だから、迦羅紗の姿が己と重なって見えたのだろう……。
 瑠櫻の言葉に、他の者たちも頷きを示す。
 たとえ迦羅紗の行為が七天としての使命を放棄したことになろうとも、彼らには仲間を蔑む気も愚かだと嘲笑する気も毛頭ないのだ。
「とにかく――これ以上の犠牲は出せない」
 水鏡は沈痛な面持ちで、皆を見回した。
 直後、
「――そうだね。私が間違っていたのだよ」
 不意に、新たな声が室内に響いた。
「端から間違っていたのだ。私の大事な七天を引っ張り出したりするなんて――」
 いつの間に出現したのか、一段高みにある玉座に一人の青年が座していた。
 黄金と橙を混ぜ合わせたような髪に、黄昏色の双眸。
 神秘の光輝を裡から滲ませているような、美麗な青年だ。
 憂いを帯びた瞳が、見る者に掴み所がないような印象を与える。
「――天王様っ!?」
 その場にいた四人の驚きの声が重なる。
 ほぼ同時に、彼らはその場に跪いていた。



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2009.06.24 / Top↑
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