ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 辺境調査局の港には、第四調査船ベイラと第七調査船スクルド――二隻の宇宙船が停泊していた。
 どちらの船にも、逃げ延びて来た人々が群がっている。
 ミシェルは、迷わずにブルーメタリックの船へと突き進んだ。
 美しい流線型を描く巨大な船は、慣れ親しんだスクルドのものだ。
「やっと着いたね」
 スクルドを見て安堵したのか、ミスミが小さく息を吐き出す。
「ええ。もうすぐ中に入れるわ」
 ミシェルはミスミとはぐれないように注意しながら、密集する民間人の中に紛れ込んだ。
 この混雑では、調査局の職員だからといって優先的に先に通してはもらえないだろう。人々は恐怖に戦き、切羽詰まり、殺気立っているのだ。
 港へ逃げてきた人の数は、ミシェルの予想よりも少なかった。
 この近辺に住宅街は存在していない。あるのは、ルート15とリニア・ステーションと宇宙船港だけだ。逃げ延びてきた人の大半は、ルート15で予期せぬ震災に見舞われた者たちだろう。
「ザッと見回して、二万人強くらいね。これなら二つの宇宙船に乗り切れるわ」
 ミシェルは独り言ち、ホッと胸を撫で下ろした。
 他の地区の被害はまったくもって解らないが、少なくともここに集った人々の生命を護ることはできる。
 不意に、人混みの一部が大きく動いた。
 ミシェルとミスミも流れに従って前進する。
 程なくして、スクルドのゲートが眼前に現れた。
 スクルドは地上五メートルほどの高さに浮いている。地震を避けるためだろう。五つある船体ゲートは、全て開かれていた。そこから長いエスカレータが伸びている。
 ミシェルはエスカレータに飛び乗り、逸る気持ちを抑えながら船内に到着するのを待った。
「民間の方は船員の指示に従って、ゆっくりと進んで下さい!」
 ゲートの脇で、船員が声高に叫びながら民間人を誘導している。
 ミシェルは船内に入ると、素早く辺りを見回した。出入口付近の壁に《2》という数字が刻印されている。どうやら、ここは第二ゲートであるらしい。
「ミスミ、こっちよ」
 現在地を確認するなり、ミシェルはミスミの手を引いて通路を歩き始めた。
 何本もの通路が交差する広いホールに出たところで、ドクター・イブリスの姿を発見する。
「重傷者は優先してメディカル・センターに運んで! 衛生員、軽傷者の治療は後回しにして、ストレッチャーを!」
 怪我人の症状を診て回りながら、イブリスがてきぱきと指示を飛ばす。彼女の髪は激しく乱れ、目は鋭い眼光を放っていた。
 とても声をかけられる状況ではない。
 ミシェルは足早にホールを通り抜け、数メートル進んだところを右に折れた。
 その途端、二人の船員に出会す。
「ここは、立入禁止区域です」
「民間の方は船員の指示に従って、娯楽エリアへ進んで下さい」
 生真面目な顔つきで、船員たちが告げる。
 ミシェルは内心で舌打ちを鳴らした。彼らには、ミシェルの着ている辺境調査局の制服が目に入っていないらしい。もっとも、横転続きでズタボロになり、制服かどうか判別がつかないのかもしれないが……。
 仕方なく、ミシェルは胸ポケットからIDカードを取り出し、二人の眼前に突きつけた。
「ミシェル・ギルフォート。辺境調査局第七調査隊、カケル・アマミヤ少佐の補佐官です」
「あっ……これは失礼を――」
 恐縮したように敬礼する船員たちの間を、ミシェルはミスミを引きつれて擦り抜けた。
 そのまま、通路の突き当たりにあるエレベータに乗り込む。
 メインブリッジへの直通エレベータだ。
 ものの数秒で、エレベータはスクルドで最も高い場所に位置するメインブリッジに到着した。



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2009.06.24 / Top↑
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