ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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「ニッポン・エリアは……ダメかもしれないな」
 カケルが諦観混じりに呻く。
 各地で相次ぐ火山の噴火――それはニッポン・エリアの壊滅を意味していた。
 全ての火山が噴き出すマグマ、引き起こす地震に、政府が対応できるはずもない。人々は成す術もなく天変地異の波に呑まれてゆくだろう……。
「ニッポンだけではありません。地球上の至る所で、主立った火山が噴火しています」
 再び、クリスの声が凶報を告げる。
 ミシェルは息を呑んだ。驚愕と恐怖が胸中で交錯する。ニッポン・エリアで発生している驚異的な天災が、地球規模で巻き起こっているというのだ。
 信じられない――というよりも、信じたくない現実だ。
「キリマンジャロ、ケニア山、エトナ山、オリサバ山、コトパクシ山はもちろん、他の火山も噴火しているようです」
 クリスの声が微かに震えを帯びる。
 ディスプレイに視線を落とし、ミシェルは愕然とした。
 画面には地球の地図が広がっている。地図の随所で、噴火を示す赤い光が明滅していた。その数は、あまりにも多すぎる。
「……た、隊長」
 ミシェルはゴクリと唾を呑み込み、ゆっくりとカケルを顧みた。
「わたし、ここに来る前に軍幹部の私用船が飛び立つのを見ました。彼らは、この惨事を予期していたから逃げ出したんですよね? つまり、地球にはもう……望みがないってことですよね?」
 恐る恐る言葉を紡ぐと、カケルは眉間に深い皺を刻み、厳しい眼差しでミシェルを見返してきた。
「多分な。高官の私用船なら、俺も見た。奴らは民間人を捨て、一目散に逃げ出したんだ。卑劣で情けない連中だ。こっちからの通信にも応じるつもりはないらしい。最低最悪だ」
 幹部に対する侮蔑の言葉を吐き、カケルは巨大モニターへと視線を転じた。
 モニターにも地図が広がっている。
 地図上で赤く輝く噴火の標しが、ひどく禍々しく、不吉だった。
「ニッポン・エリアどころか、地球そのものがダメみたいだ……」
 ラギが嘆かわしげに呟く。
 その隣で、カケルが重々しく頷いた。
「地球の限界、か……。火山の一斉噴火は、地球の最期の雄叫び――断末魔の悲鳴なんだろうな」
「けれど、オレたちには感傷に浸ってる暇も、恐怖に震えてる暇もないね……。とにかく、民間人を救出して地球を離れることが先決だ」
 ラギが己れに言い聞かせるように断言する。
 ミシェルは気を引き締めるために幾度か頭を振り、両手で頬を叩いた。
 ラギの言う通りだ。地球が破滅へのカウントダウンを始めてしまったことは、非常に辛く哀しいことではある。
 しかし、悲嘆に暮れている場合ではないことも確かだった。スクルドに希望を託し、必死に生きようとしている人々を見捨てるわけにはいかない。
 最期の刻を迎えようとしている地球には非常に申し訳ないが、ミシェルたちも、そして多くの人間たちも、生きたいのだ。
 まだ生きたい――と、最期の咆吼をあげている地球同様、ミシェルたちだって生き続けたいのだ。
「船長! 民間人の誘導、終了しました」
 下の段からレイラの毅然とした声が飛んでくる。
「よし。じゃあ、ゲートを閉めてすぐに出航だ。全船員と船内にその旨をアナウンスしてくれ」
 迅速にラギが指示を出す。
「わたしも何か手伝います!」
 ミシェルは船長席を飛び出し、下の段へと向かった。
 ブリッジには、ラギとレイラと彼らの補佐官しかいない。通常時に比べて、クルーが大幅に少ないのだ。宇宙船の操縦に関しては詳しい知識を持ち合わせていないが、指示されればコンピュータを操作することや、計器類のチェックをすることくらいはできるだろう。そう考え、ミシェルはレイラの元へ急いだ。それに、何かしていなければ地球の絶叫に感応してしまいそうで、怖かった。
「レイラ副船長、わたしにも何か指示を――」
 言いかけて、ミシェルは不意に口を噤んだ。
 ミスミがいない。
 先ほどまで、ここで水を呑んでいたはずのミスミの姿がない。
 反射的にブリッジ内を見回すが、何処にも彼の姿は見当たらなかった。
「あれ、ミスミは?」
「えっ? さっきまで、ここにいたんだけれど……」
 レイラが不思議そうに首を捻る。彼女もたった今、その事実に気づいたようだった。
「何処に行ったのかしら?」
 ミシェルは眉をひそめ、乾いた唇を軽く舌で舐めた。地球の大異変に気を取られている間に、ミスミはブリッジを抜け出してしまったらしい。
「まさか、外に出たってことはないでしょうけれど……。心配なら捜してきなさいよ」
「でも、ブリッジが手薄に――」
「私と船長がいれば、スクルドはちゃんと翔ぶわ。心配無用よ」
「ありがとうございます。すみません。わたし、ちょっと行って来ます」
 ミシェルはレイラに向かって深々と頭を下げると、急いで踵を返した。
 物凄い勢いで階段を駆け降りる。
「オイ、何処に行くんだ?」
 エレベータの前に辿り着いたところで、上からカケルの声が降ってきた。
「ミスミを捜してきます!」
 簡潔に応じ、ミシェルはエレベーターに飛び乗った。


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2009.06.24 / Top↑
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