ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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紫姫魅天居城――紫毘城



 また、夢を見ていた。
 紫姫魅は、己の意識が夢の世界を彷徨っているのを感じていた。
 ここ数日、こうして夢ともうつつともつかぬ曖昧な空間に微睡んでいることが急速に増えた気がする……。
 身の裡は鉛を詰め込まれたかのように重いし、心の裡では遙かな昔の残像が甦っては――儚く消えてゆく。
 最早、このまま滅してしまうのかもしれない……。

 今も得体の知れぬ暗暗とした闇の中を漂っている。
 ――ここは何処なのだろう?
 そう疑問を抱いた瞬間、意識が急激に下方へと引っ張られた。
 物凄い速度で闇の中を落ちてゆく。

 ドンッ!

 すぐに衝撃が訪れた。
 全身が何かに叩き付けられたかのような重々しい衝撃。
 離脱した魂が肉体に戻る感覚に似ているな、と紫姫魅は思った。
 転瞬、己の意識に肉が備わった。
 心臓や脳――その他の器官が一斉に活動を開始する。
 五感が正常に働き、手足の先まで神経が行き渡るのを確認した。

 真っ先に感じたのは、冷たい水の感触――

 紫姫魅はゆっくりと瞼を押し上げた。

 雨が降っている。

 ――これは、本当に夢なのだろうか? それとも……。
 紫姫魅は、激しく身を打つ雨粒に妙な生々しさを感じながら、訝しげに空を振り仰いだ。

 澱んだ天穹。

 雨は、鈍色の空から降り注いでいる。
 水の感触は本物と何ら変わらなかった。
 天から視線を引き剥がし、前方を見つめて――紫姫魅は美麗な顔をしかめた。

 眼前に、鬱蒼とした森が広がっている。

 そこだけで異様に闇が濃く、不快な瘴気を放っていた。
 紫姫魅がこの特異な森を忘れるわけがない。
 それは、彼の管轄下にある危険な森。

《妖魔の森》だった――



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2009.06.27 / Top↑
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