ファンタジー&ジュヴナイルを中心とした自作小説です

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 不意に、眩い黄金の輝きが視界に溢れた。
 いつの間にか巨大な噴水は姿を消していた。
 代わりに、噴水と同じ大きさの円が地表に出現していた。
 光は、そこから洩れている。
 驚く冬子の視野で、黄金の光が縦横無尽に走り抜けた。
 瞬く間に、光が奇怪な紋様を地面に描き出す。
 噴水跡の円のすぐ内側には、身体に文字を刻んだ長い蛇が描かれている。
 蛇の内側には四つの五芒星。
 円の中心には菱形、外には四方にそれぞれ五芒星が配され、真上には三角形が描かれていた。
 不可思議な文字と紋様で造られた光の図形を見て、冬子は唖然と口を開いた。
 詳しいことは知らないが、これが俗に言う《魔法陣》なのだろう。
 噴水は、魔法陣を隠蔽するためのカモフラージュだったのだ。
 光溢れる魔法陣――その中心たる魔法円の中に、雅は畏れることなく足を踏み入れていた。
 菱形の中に立ち、中心部に剣を突き刺す。
「地獄の西界王――パイモンの紋章を」
 柄に手を添えた雅が、祈るように口ずさむ。
 すると、刀身が淡い光を発した。
 光が不可解な紋様を抱く円を虚空に刻印する。
 これが、雅の言う《パイモンの紋章》なのだろう。
 冬子は突如として形成された幻想的な空間と雅を、声もなく見つめていた。
 雅がこれから何をしようとしているのか、朧だが理解できた。
 彼は、新たな悪魔をこの地上に喚び出そうとしているのだ。
「我は汝を召喚する。パイモンよ。我は至高の権威をよろいて、汝に強く命ず……」
 魔法陣が完成したのか、雅の唇から凛とした呪文が紡がれ始める。
「我は神の姿に似せて創られ、神の御意に添いて神の力を授けられたる者なれば、神の御名によりて命ずる……」
 雅が新たな呪文を唱えると、魔法陣から溢れる光の量が増大した。
「最も偉大なる万軍の主のみ名によりて、汝に命ず。――汝、世界の何処にあろうとも、遅滞なく我が許に現れよ。汝、我が前に愛想よく現れ、我に理解できる言語にて、我が問いに理に適う答えを為すべし……」
 矢継ぎ早に放たれる呪文。
 それに呼応するように三角を描く箇所――魔法三角が一際眩い光を発した。
 だが、それ以上の変化はない。
「我は、汝が主ルシファーと盟約せし者なり。また、偉大なる魔術の祖――ソロモン王の鍵を継ぐ者なり。我が忠誠はルシファーとソロモン王にあり。ルシファーとソロモンの二名に喚ばれ、我の前に出よ、火界王パイモン」
 雅が剣を地面から引き抜く。
 彼は、その切っ先を中空に浮かぶ紋章へと向けた。
「再びソロモンの壺に封じられたくなければ、我が前に現れ、我に忠誠を誓え――」
 冷然とした声音で呪を繰り出し、雅は剣を紋章の中心に突き刺した。
 刹那、魔法円が閃光を放つ。
 黄金の光柱が天へと迸った。
 呪の完成を示すような華々しい光の柱は、天高く昇り、スッと消失する。
 パッパラパッパーン!
 唐突に、甲高いラッパの音が空気を震わせた。
 


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2009.07.01 / Top↑
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